平凡な物事でも「4つの問い」で
探究テーマになる
平凡な物事の見方を変える代表的な手法として、動物行動学の分野では有名な「ティンバーゲンの4つの問い」という考え方がある。
(1)その特徴は、何の利点があるか?
(2)その特徴は、どのようなメカニズムで実現されているか?
(3)幼い個体はその特徴を得るまでに、どのような成長・発達過程を通るのか?
(4)その特徴は、どのような進化の末にできあがったのか?
4つの問いの対象は同じものだが、中身はがらりと違う独立した謎である。たとえば対象を「ニワトリの鳴き声」に当てはめてみよう。
(1)夜明け前に鳴く理由は何か
(2)どうやって夜明け前に目覚め、大声を出すのか
(3)若いニワトリは鳴くのか
(4)大昔の祖先は鳴いていたか
たちまち4つの探究テーマが出来上がる。この動物行動学の研究向けのティンバーゲンの問いは、以下のように、どんな題材にも当てはめられる視点として応用できる。
(1)目的・利点・誘因
(2)実現を支える機構
(3)実現を支える機構の作り方
(4)変革の歴史、将来予測
例えば野球が好きならば「牽制球」、日本史が好きならば「関ケ原の戦い」など、上記(1)~(4)に沿って切り口を変えて考えてみると、テーマのアイデアが生まれるきっかけになるかもしれない。
「物事の一面だけ調べてテーマにしようとせず、もっと細かく見て、深く調べる取っ掛かりがないかと考えることが大事です。一つの題材の中に、探究テーマはいくつも潜んでいます」
そして、物事を見る多角的な視点とあわせて、「自力で証拠が集められるかどうか」という点も、テーマ探しの重要な要素だ。
「自分の手を動かして実験や調査、検証などを行い、課題の答えを出すことができないと結局、論文や本などに書かれていることを証拠にするしかありません。それは検証済みの結論をなぞるだけのことで、自分で発明、発見するという余地がなくなってしまうわけです。探究学習で大事なのは『私がやってみたらこうでした』という、皆が納得するような切り札があること。自力で集めた証拠こそがその切り札になるのです」
探究のテーマを広げすぎると、活動に時間と労力がかかりすぎて、結果をまとめる前に時間切れになってしまう危険がある。探究する価値の高い部分、調査対象に全力を集中させるためには、何らかの仮説にたどり着くまでテーマを絞り込んでみよう。
「仮説はとりあえず、結論が正しいか、間違っているかが明確になる“検証可能なサイズ”に納めることが重要です」