まず用意したい「探究ノート」
活動の全てを書き込んでいこう

 探究学習は、テーマ選定から始まる。このテーマ選定が探究学習の命だ。「アイデア勝負」で自由な発想が求められる。

 探究活動を始めるにあたって、まずは自分専用の「探究ノート」を用意しよう。探究ノートとは、航海における航海日誌のような役割を持つもの。航海では日々の速度や航行距離、天候などあらゆる情報を記録して、航海計画を管理するように、探究ノートを、自分の探究活動のすべての情報を管理、集積する場として使っていくのだ。

 ノートには探究テーマのアイデア、各アイデアの長所と短所から、活動の進捗状況、誰かに相談した内容、実験データや参考文献など、あらゆる情報をどんどん書き込んでいく。

 特に探究活動の進み具合の管理手法として、中田氏は「KPT(Keep、Problem、Try)」という枠組みをすすめる。コンピュータシステム開発の分野で使われてきたプロジェクト管理の枠組みで、現在ではビジネス全般で取り入れられている。

 Keepは「できたこと」、Problemは「問題になっていること」、Tryは「次に挑戦すること」だ。

「活動について、このKPTがどうなっているかをノートに書き出しましょう。前回のTが続行中ならば、今回のKに引き継がれていなければいけません。大事なのは必ず書き出すことです。頭の中でなんとなく思い浮かべているだけでは、考えていることになりません」

 探究ノートを用意したら、さっそく探究するテーマ探しを始めよう。「テーマの範囲も手段も自由」という場合、縛りがなくて楽なように見えて、かえってどこに着眼して何をすればいいのかがわからないという苦労もある。じっくり考えることは大事だが、あまり長く考えすぎると探究が始められない。

「テーマ探しが苦手な人は、自分の身の回りにある物事をすべて『なぜ?』という疑問の目で見て、アイデアを出してみましょう」

 例えば雨の日に「どうして雨が降るのだろう?」という疑問は「雨が発生するメカニズム」というテーマにつながる。「1億年前の雨と今の雨に違いはあるのか?」ならば「惑星地球の歴史」、「雨が降ることで得することはあるのか?」ならば、「水と人間生活・経済」といった方向にテーマを定めることができる。

「なぜ?という疑問の目はすべての物事に張り付くものです。自分の周りには探究のテーマになるような物事はないと思ってはいけません。その思い込みを破ることが、探究学習の鍵になります」