気をつけたい
「倫理と安全」の問題

 最後に、ものを調べるという探究活動には常に危険が伴うことを理解しておかなければいけない。中田氏が探究のガイドの際に最も心を砕くのが「倫理と安全」の問題である。

「探究活動では不慣れな生徒が実験や調査をするため、事故やけがなどの物理的なトラブルが起こりやすいですし、他人の著作権やプライバシーの侵害、データ改ざんなどの倫理的なトラブルもありえます。よかれと思った調査でも他人に思わぬ迷惑をかけたり、社会の批判をまねくことになってしまったりと、探究の活動にはあちこちに落とし穴が待ち構えていると思いましょう」

 例えばアンケートで「氏名」を書かせる場合は、調査の目的に名前が必要なのか熟考する。名前はプライバシーや個人情報保護の中心的要素で、著作権も頻繁に問題になる。

 調査の都合上、本の中の図版やイラスト、写真を無断でコピーして使うと著作権の侵害になるが、学校の授業で使う場合は例外的に認められるケースも多い。自分がコピーを使うならばどのケースに該当するのか、著作権について正しい知識を持とう。また、他人の文章を無断で引用した場合は盗用になる。WEB上から文章を「コピペ」して使うことも同様だ。

「大学では研究活動の安全と倫理に関する点は非常に厳しく審査していて、この問題に関する専門書籍も多く出版されています。しかし、中高生向けの探究学習の指導書や参考書では、安全と倫理に対する配慮の記述が非常に手薄に感じます」

 安全と倫理に関するトラブルを未然に防ぐためには、活動をする本人が気をつけることはもちろん、教師や保護者たちも十分に目配りをしてほしい。