直木賞作家・今村翔吾初のビジネス書『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)では、教養という視点から歴史小説について語っている。小学5年生で歴史小説と出会い、ひたすら歴史小説を読み込む青春時代を送ってきた著者は、20代までダンス・インストラクターとして活動。30歳のときに一念発起して、埋蔵文化財の発掘調査員をしながら歴史小説家を目指したという異色の作家が、“歴史小説マニア”の視点から、歴史小説という文芸ジャンルについて掘り下げるだけでなく、小説から得られる教養の中身やおすすめの作品まで、さまざまな角度から縦横無尽に語り尽くす。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
数珠つなぎに知識を深める
私はウィキペディアを閲覧するのが、わりと好きです。ウィキペディアで「坂本龍馬」を調べると、龍馬の人生や功績をひと通りチェックできます。
しかも、解説文の中には、たくさんのリンクが貼られていて、「北辰一刀流」や「安政の大獄」といった項目にすぐに飛べるようになっています。
北辰一刀流の項目を読んでいて「千葉周作」という人物が気になれば、それをクリックして調べていく……。情報の正確性には注意が必要でしょうが、数珠つなぎに知識を深めていける非常に便利なツールといえます。
ウィキペディアと本の違い
ただ、ウィキペディアには、インスタントな勉強法であるがゆえの落とし穴があります。読んだ内容をすぐに忘れてしまいがちなのです。
その点においては、やはり本には一日の長があります。本を活用して、ウィキペディアと同じように数珠つなぎに知識を深めていけば、圧倒的に脳に定着します。
ウィキペディアは遠くから引き出し(脳の引き出し)に向けて紙(知識)を飛ばし、入ったらOK、入らなかったら仕方がないというイメージ。これに対して読書は自らの手で紙を運んで、確実に引き出しにしまうというイメージでしょうか。
知識と知識の組み合わせ
本で知識を増やしていけば、いつの間にか引き出しの中がいっぱいになります。新たな引き出しを持ってきて、そこに知識を詰め込んでいけば、いつの間にか「知の壁」のようなものができあがります。
まさに教養が確立された状態です。教養が確立されれば、引き出しの中の知識と知識を組み合わせて、斬新な意見を発表できるようにもなります。
答えを出すのが難しそうな課題に直面しても、いろいろな知識の組み合わせの中から、最も妥当な方法を見つけ出せるようになるわけです。
確実に自分の中の
何かが変わってくる
とはいえ、肩肘張らずに、まずは楽しむことが一番です。「賢くなろう」「上手いことを言ってやろう」などとは考えず、興味のおもむくままに小説を読んでいるだけで十分です。
読んでいるうちに、確実に自分の中の何かが変わってきます。不自然に曲がっている道を目にしたときに、「どうしてこうなったんだろう?」と興味を持ち、何かの歴史に関係しているだろうと仮説を立てて調べる。
こんな習慣が身につけば、それだけで人生は楽しくなっていきます。ぜひたくさん本を読んで、教養ある人生を送ってください。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。