今からできることはないのか?
専門家たちが提唱する「11の対策」

 では、今からできることはないのでしょうか。南海トラフ地震に備えて、最低限、絶対に必要となるであろう立法・行政措置をここで訴えたいと思います。これは筆者だけの意見ではなく、建設、消防、自衛隊、自治体に関わるキーマンなどに意見を聞き、それらを総合したものになります。

(1)憲法の緊急事態条項は、OECD加盟国の38カ国中30カ国が採用しています。日本の場合、かつての戦争の記憶から軍隊の台頭を怖がり「昔来た道をもどる」と反対する政党がまだあります。しかし、災害時に限って立法を提案するのであれば、反対する理由はありません。

(2)大阪・関西万博の延期または中止も必要です。私は能登半島地震の発生時から、建設技術者や労働者を万博に集中するのは愚策であると主張してきましたが、おそらく日本維新の会との連携を保つ目的のためだけに、岸田首相はいまだにそれを決断できずにいます。近畿圏の建設業者からも延期の声があがっている以上、維新の会に決断を促し、延期に踏み切るべきです。

(3)実行力のある民間人、あるいは在野の賢人を中心に、大災害後に新型国家の建設計画を策定するための委員会を早急に立ち上げること。関東大震災では、すでに後藤新平が作った東京改造計画があったため、東京は復興後、さらに発展しました。

 たとえば、今回は首都圏に集中し過ぎた国家機能、人材、人口を分散することも視野に入れ、地方の過疎地に仮設住宅(と言っても、相当きちんとしたもの)を大量に建設した街を事前に作っておく。これを全国に展開し、震災時はそこに人を避難させ、復興が一段落ついたら「年金だけで暮らせる町」として、都会の高齢夫婦の移住促進を図るなどしてはどうでしょうか。コミュニティで育児や介護を行える地方分散型の都市計画をつくり、それに併せて道路や自動運転バスなどの公共交通機関を整備すれば、単に都市を復興で元に戻すのではなく、前に進むチャンスとなります。