復興が進まない能登半島地震の教訓
南海トラフ「驚き」の被害予想とは

 能登半島程度の狭い地域で8カ月もかかって復興ができないのには、いくつか原因があります。たとえば、以下のようなことです。

・事前に建設会社などと協力した復興計画ができていなかった。

・国民の私権が優先されるため、街や道路の復興において廃屋の持ち主の許可がとれないなどの理由から、工事ができない。

・半島の突端などの地形に対応できず、復興のための機材や人手を供給する大規模な基地を、後方の安全な地域に建設できなかった。

・土地が狭く、仮設住宅の適地が見つからない。

 しかし、南海トラフ地震は日本の中枢部を襲う可能性があり、とりわけ駿河湾方面に被害が出ると日本の交通が分断されるリスクもあります。さらに富士山の噴火を誘発する恐れもあると言われているため火山灰対策も必要になるなど、今までの震災とは比べ物にならないくらい、困難なテーマを抱えています。政府の中央防災会議によると、南海トラフ地震における最大規模の被害想定は以下の通りです。

・全壊・焼失家屋/最大約61万棟

・ライフライン・インフラへの被害/電力:最大約1220万件、通信:最大約470万回線

・避難者数/最大約720万人

・要救助者数/最大約7万2000人

・被害額/資産などの被害約47.4兆円、経済活動への影響約47.9兆円(万一、これに富士山の噴火が加わると、経済的な被害額は約2兆5000億円増加)

 これほどの被害が想定されているにもかかわらず、もし十分な対応できないまま「Xデー」を迎えたとしたら、政治家への信頼は地に堕ち、二度と公務に復帰することはできないでしょう。いや、莫大な数の生活困窮者が出ると予想されるため、彼らの家族の安全さえ保証されないかもしれません。