お盆休みも明け、いよいよ上半期も残すところあとわずか。目標の達成に向けてラストスパートをかけたくなる時期ですが、目標を気にするあまり「自分本位な仕事をしてしまう」のも避けたいところ。目先の結果を求めるあまり、相手からの信頼を失ってしまうことも。
そこで今回は、2024年6月に発売するとたちまち重版となり、「仕事の本質を学べた」「お客様とのエピソードの数々に5回は泣きました」と反響を呼んでいる記憶に残る人になるの著者・福島靖さんと、株式会社Omoitsukiの代表であり『大人の夢の叶え方』の著者でもある幸義一さんに、人から信頼を得るためのコツについて話していただきました。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

なぜ結果を出す営業は、お客様の「子ども」に好かれるのか? 元外資系営業が明かす納得の理由Photo: Adobe Stock

信頼される人がやっている「感謝と報告」

Q 長く付き合っていく人たちとの信頼関係の作り方を教えてほしいです

幸 義一(以下、幸) すごく当たり前なことを言いますけど、感謝の気持ちを忘れないことでしょうか。

 その場で伝えるのは、誰でもできると思います。
 大切なのが、久しぶりに会ったときにもちゃんと伝えること。

「あのとき福島さんが言ってくれたこと、今でも忘れられないんです。本当にありがとうございました」

 こう言うと、ずっと覚えてくれていたと伝わって、さらに信頼してもらえます。

 その上で、報告をすることも大切です。たとえば、

「あのときに福島さんが紹介してくれた人、その後で商談をしまして、おかげさまでビジネスにつながりました」

 といった感じです。紹介されたときに直接「ありがとうございました」と伝えるだけでなく、その後の結果も伝えて再度感謝するんです。

 紹介した方としても、最新の情報を伝えてくれれば、もし自分が紹介した人とその後に会ったときに、その話ができるじゃないですか。
 実際にそれをしてくれた人がいて、おかげで僕は、自分が紹介した人と距離感を間違えずに接することができました。

人がもっとも「嬉しい」と感じる瞬間

福島 靖(以下、福島) 営業マン時代、ある後輩が辞めるときに、「福島さんに、すごく感謝していることがあるんです」と言われたことがあります。
 僕もその後輩にはいろいろしてあげたつもりだったので、「あれかな? それとも、あっちかな?」と、いっぱい思いつきまいた。

 でも、全部はずれでした。
 その後輩は何が嬉しかったのかというと、彼の娘さんの誕生日を僕が覚えていたことでした。
 そういえば「今日、娘さんの誕生日だね」みたいなことを言ったような気がしてきました。あまりに些細なことだったので僕は完全に忘れていたんですが、彼にとってはそれがいちばん嬉しかったようでした。

『記憶に残る人になる』にも書きましたが、人は自分の大切な人を大切にしてもらえたときがいちばん嬉しいんです。
 僕にも2人の娘がいるので、その気持ちはよくわかります。

 なので僕は、お子さんがいらっしゃるお客様のご家庭にうかがうときは、お子さんにどう喜んでもらおうかと考えるようになりました。
 そこで、簡単にできる手品を用意してみたりしました。幸さんに見せたことありましたっけ?

 実物を見るのは初めてかもです。

大切な人の「大切な人」を大切にする

福島 その手品がこれです。たくさんの乗り物の絵が書いてある紙です。
 ここから1つをお子さんに選んでもらって折りたたみます。1面ずつ見せて、そこに選んだ乗り物の絵があるかないか答えてもらうだけで何を選んだかを必ず当てられるんです。
 簡単な仕掛けですが、これを見せると、小学生くらいまでの子にはめちゃくちゃ驚かれて尊敬されます。

 するとだいたいのお子さんは「自分が好きなアニメキャラでつくりたい!」など言ってくれるので、その場で親御さんにデータを送って一緒に作ってあげるんです。あ、ちなみにこれ、商談で訪れたご家庭でやってますからね。遊んでいるようですが。

 するとどうなるか。そのお子さんは自分でつくった手品を翌日の学校に持っていって、ヒーローになるんです。まあ、だいたいは先生に怒られて没収されるんですけどね。

 でも親御さんにはとても喜ばれます。
「福島さん、うちの子どものことまで考えて用意してくれて、ありがとうございました」と。

 子どもが喜んでいる姿ほど、親にとって嬉しい光景はないですよね。

福島 お客様にとっていちばん大事なものは何なのか。僕は普段、それを考えるようにしています。
 それは人かもしれないし、価値観かもしれないし、その人が経営者であれば会社の設立記念日かもしれません。

 そうだとしたら、自分は何をしてあげられるか。これを考えることが、長く付き合っていきたい相手のために考えていることです。

(本稿は、書籍『記憶に残る人になる』の著者・福島靖さんが行なった対談の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)

なぜ結果を出す営業は、お客様の「子ども」に好かれるのか? 元外資系営業が明かす納得の理由
福島 靖(ふくしま・やすし)
「福島靖事務所」代表
経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。地元の愛媛から18歳で上京。居酒屋店員やバーテンダーなどを経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。お客様の記憶に残ることを目指し、1年で紹介数が激増。社内表彰されるほどの成績となった。その後、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。株式会社OpenSkyを経て、40歳で独立。『記憶に残る人になる』が初の著書となる。
幸 義一(みゆき・よしかず)

外資系の製薬会社、医療機器会社を経て2021年3月に起業。全くの未経験からTwitter(現X)をはじめ、約2年でフォロワーが5万人に。集客、販売、採用、PRの全てをTwitterで賄ってきた経験から事業展開。「あなたにお願いしたい」と言われる人(アカウント)になるためのコンサルティング。(株)Omoitsukiを創業し現在4期目。SNSを使って求職者を集めるSNS採用支援をメインサービスとして提供。2023年「大人の夢の叶え方」を商業出版し、著者として講演活動なども行う。