このときのお子さんの状況は、心が空っぽで疲弊して動けない状態です。家庭というのは安心安全が保たれて心の栄養を補給できる場所でなければいけません。私たちはお腹が空いた腹ペコ状態では動けないように、心の栄養も補給されないと元気に外にはいけないのです。そんな状態では、勉強や仕事どころではないことは想像に難くないでしょう。

 お母さんが気分次第でガミガミ怒っている家の中は、子どもにとっては、森の中で、いつ猛獣が出てくるかわからなくて、ビクビクしている状態と同じです。

 そうなると、常に戦闘態勢をとり続けているようなものなので、疲れて動けなくなるのも無理ないのです。

 こうした時、子どもには安全欲求が生まれています。

 安全欲求とは安心できる環境で生活したいという欲求です。つまり、安心や安全を感じられないからこそ湧いてくる欲求です。不思議なことに家庭が安心・安全な環境になり、安全欲求が満たされると、不登校のお子さんも、ほとんどがすぐに学校に行けるようになります。実際、私が主宰するお母さん育ての講座の受講生さんにも、不登校だったけれど、今は元気に学校に行っているお子さんはたくさんいらっしゃいます。

 なぜ、お子さんの行動変容が起きるのか?それはお子さんの「安全なところで過ごしたい!」という安全欲求のSOSの声をしっかりキャッチして満たしてあげることができるからです。

 お子さんの不登校をきっかけに私の講座を受講したMさん。お子さんの安全欲求を満たしてあげていないことに気づいて、Mさんが変わったら、お子さんは元気に学校に行けるようになりました。それだけでなく、意欲的に勉強もするようになりました。

 こうなるまでにMさんにどんな気づきがあったのでしょう。あなたの気づきになるように、その経緯をお伝えします。

「わかっているけど、
学校に行けないわが子にイライラが止まらなかった」(1)

 Mさんはお子さんが学校に行けなくなってからスクールカウンセラーに相談すると、「無理に来させず、お子さんを見守りましょう」と言われたそうです。

 お子さんを信じて見守るのは大事なことです。でも、それはお子さんのエネルギーが充電されるのを待つためで、放電させるためではありません。