メンバーの本音を引き出し、組織を活性化するために活用されている1on1ミーティングだが、悩んで行き詰まったメンバーに対して、どのような言葉をかけるべきか迷ったことはないだろうか? メンバーの悩みに寄り添う際、頭のいいリーダーはあるNGワードを避けている。その詳細を教えてくれる本が、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長の中島崇学氏の著書『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』だ。今回は、同書から特別に抜粋。コミュニケーションをより効果的にする、相手が心を開きやすくなる言葉選びのポイントを紹介する。
心理学的にも効果が認められるコミュニケーション
社会心理学者のクルト・レヴィンは、「オフサイト・ミーティング」の提唱者として知られています。会議室などの“現場(サイト)”を離れて、肩書きや役割にとらわれずに個として話し合うことで、組織が活性化し、チームワークが良くなるというものです。
最近では1on1ミーティングが同様の効果があるものとして重視され、多くの企業で取り入れられています。
悩んで行き詰まっているメンバーがいるとき、どのように話しかければいいのか、相手の行動を促したいときのひと言を紹介しましょう。
悩んでいる人にかけてはいけない言葉
明らかに悩んでいる相手に対して、いちばんの禁句は「Why」です。
×「なぜ、そう思うんでしょう?」
なぜ悩んでいるのか、どうして元気がないのか、なぜやる気を出せないのか……。
「なぜ」という言葉を投げ掛けられた相手は、責められている気持ちになります。「Whyは心を閉ざす質問」とよく言われるほどです。
ストーリーを語ってもらう前向きな意味
そこで「What」を使い、悩みの背景についてストーリーを語ってもらうように促します。悩みの原因をロジカルに追及するのではなく、悩むに至るまでの物語を聞かせてもらう。自分のストーリーを語ることは、それだけで癒しになります。
また、ストーリーは感情移入をしやすいので、話す人と聞く人が同じ物語の中を生きている感覚になれます。安心・安全な空間になり、そこでは評価や判断ではなく共感が生まれるので、なおさら話しやすい空気になります。
ひと昔前であれば、終業後に居酒屋で「そう思うようになったきっかけを教えてくれる?」とたずねたり、社内であっても「ちょっとタバコ吸いに行こうか」と場所を変えて話したりという“昭和のワザ”が通用しました。しかし現在は、私たちが自分のストーリーを語れるひと時は、ほとんど得られない貴重な体験です。
ストーリーを語った後、自分がどうなっていたいかを確認します。負の連鎖から抜け出して前向きになり、「こんな仕事がしたい!」となれば理想のゴール。
やらされ感の解消につながる
「ちょっと気持ちが軽くなった」というのも立派なゴールです。悩みにとらわれているときは理想やゴールの状態を忘れているので、そこに意識を向けることで雰囲気が改善されます。
松下電器(パナソニック)創業者の松下幸之助さんは、プロジェクトの予算やスケジュールを確認した後、必ず「○○君はどうしたいんや?」と名前を呼んでゴールを尋ねたそうです。
また、リクルートには達成目標などを部下に言わせた後、「で、君はどうしたいんだ?」と最後に付け加える有名な文化があります。
いずれも「やらされ感」を「自分事」に前向きに変換するのに有効です。