セブン&アイ・ホールディングスがカナダの流通大手から買収提案を受けた。実現すれば海外企業による日本企業買収としては最大級となる見通し。今後の注目は、セブン&アイがどう動くかはもちろん、わが国政府が、経済安全保障の観点から本件をどう判断するかだ。コンビニやスーパーは国民生活に欠かせないインフラであり、外資による買収に慎重な姿勢を示す可能性もある。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
セブン&アイ買収案は
経済安全保障の対象になるのか
8月19日、カナダのアリマンタシォン・クシュタールが、セブン&アイ・ホールディングスに買収を提案したことが分かった。米コンビニ業界で首位を占めるセブンの店舗数は約1万3000店、第2位のアリマンタシォンは約6000店だ。今回のM&A提案は、米国で主要ポジションを占める日本企業に対する大規模な案件として、わが国企業のM&Aが新しい時代に突入したことを示す事例といえるだろう。
1970年代以降、セブンは米国からコンビニ事業を取り込んで順調に成長した。ところが2000年代以降は、成長スピードに減速傾向が鮮明になる。この10年程度は、改革を要求する「物言う株主」(アクティビスト投資家)との対立も表面化していた。
こうした状況下、アリマンタシォンはコンビニで世界トップを目指して買収を提案したわけだが、今後の注目点は、セブンがどのようなスタンスで臨むかはもちろん、わが国政府の関与の可能性である。
具体的には、経済安全保障の観点から、わが国政府がアリマンタシォンによるセブン買収をどう判断するかだ。政府が、食料安定供給を理由に、外資による買収に慎重な姿勢を示す可能性もある。いずれにしても、セブン経営陣は改革を進め、多様な利害の調整に取り組むことが必要になるだろう。