アリマンタシォンは総合スーパーを売却する?
フランス政府は買収阻止に関与した事例も

 今回、友好的買収を提案したアリマンタシォンの狙いは何か。米国に加え、中長期的に経済成長が期待できるアジア新興国でもセブンの店舗を取得し、“世界制覇”につなげることとみられる。

 一方、アリマンタシォンが、セブン&アイグループの総合スーパー事業などをどのように考えているか、この点は気になるところだ。将来的には売却の可能性も否定できない。

 問題は、事業ごとの効率性向上と、経済社会全体での安定・安心感の維持のバランスをどう考えるかだ。長期的な国民生活の安全・安心を維持向上させる上で、国の関与が必要なケースもあるはずだ。

 今回の買収提案は、そうした問題点に対する試金石になる可能性がある。参考になるのは、M&A案件に対するフランス政府の判断だ。05年、フランス政府は、米ペプシコによる仏ダノン(食品メーカー)買収を阻止したといわれている。

 また、21年にアリマンタシォンが、仏スーパーのカルフール買収を試みた。カルフールを傘下に収めることで、米ウォルマートやアマゾンに比肩する世界企業への飛躍を目指したのだ。当時、アリマンタシォンはフランス政府に、買収後の一定期間、雇用を維持すると約束した。それでもフランス政府は、食料の安定供給がぜい弱化するリスクを理由に、買収を認めなかった。欧州有数の農業大国であるフランス政府が、自国産業の保護を優先した側面もあっただろう。

 近年、防衛機器やエネルギー、医療、サイバーセキュリティ―、半導体などに加え、食料分野においても経済安全保障の重要性が高まっている。翻って米国では、日本製鉄によるUSスチール買収に政府が反対している。今後、アリマンタシォンによるセブン株取得や、アクティビストによる国内企業への投資などに、日本政府がどう関与するか、注目すべきことが増えるだろう。