コンビニやスーパーは国民生活のインフラ
日本政府はセブン買収案にどう対応するか

 注目の一つは、改正外為法の扱いだ。セブンは、金融関や石油販売などに加えて警備も事業領域に含めている。警備は経済安全保障に関わる事業と判断される可能性は高い。アリマンタシォンがセブン株を1%以上取得する際、経済安保の観点から国への事前届け出が必要との見方は多い。

 フランス政府の先例に倣い、政府が買収に待ったをかけることもあるだろう。コンビニや総合スーパーは、一般市民の生活に欠かせないインフラだ。一方で過去には、内外の商慣習の違いへの対応が難しく、日本から撤退した外資系スーパーもあった。

 もし、買収成立後に、資本の論理に基づいて国内のコンビニやスーパーの急速な売却、あるいは撤退が表明されると、近所で食品を買えない消費者の不安は高まるだろう。

 特に地方でコンビニは、物流や金融(ATM)などの、生活インフラとしての役割も担っている。生活者が不便にになることの潜在的なリスクを踏まえ、日本政府は慎重に買収の可否を判断することになる。政府が事前審査対象になり得る、安全保障上重要な業種の定義をどう扱うかも注目される。

 また、23年に経済産業省は「企業買収における行動指針―企業価値の向上と株主利益の確保に向けて―」を公表している。その指針に基づき、セブンの取締役会は買収提案が企業価値の向上と株主利益の確保に資するか、あるいは他により望ましい方策があるか、客観的な意見を株主に示すことになるだろう。その際、国内のコンビニや総合スーパーは国民生活のインフラであり、海外企業による買収は好ましくないとの見解が示されることも考えられる。

 もう一つ注目されるのは、セブン&アイHDはコングロマリット化した体制を今後、いかに効率化するかである。世界的な潮流として、非中核資産を売却し、強みを発揮できる分野に経営資源を集中する企業が増えている。コングロマリット化を続けながら、競合他社に見劣りしない収益性を実現できるのか、企業経営者の責任が問われている。

 今回のM&A案件は、セブン&アイHDやその周辺企業に限らず、全ての日本企業に対してそうした問題を再認識するきっかけになるはずだ。