楽に生きるために
成功体験を積んでいこう

 人に頼る練習としては軽いものから始めるべきです。頼み方にも「作法」みたいなものがあるので、それを覚えるといいでしょう。

 いま私は「これで困っている」。だから「(具体的に)こうやってほしい」という2つの要素でお願いするのです(図17)。

図表2:人を頼る練習(自分の弱みを見せる練習)同書より転載
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 ただ「これをやって」と言うのは、どうしても高飛車な感じがして、人間関係を崩してしまいがちです。「これで困っている」と言うのは自分の弱みを見せる練習でもあります。

 勇気を出して自分の弱みを見せてみる。それでも案外、人はそこを責めず、親切に対応してくれることが多い。その経験を積んで初めて、「他人はそれほど怖くない、世の中は悪意ばかりではない」という体験データを蓄積できるのです。

 また、「こうやってほしい」と具体的に案を示すことで、相手が案を考える手間が省けて、相手も協力しやすくなります。

 2つの要素で依頼すると、依頼を受けてもらう体験が多くなります。その成功体験を積んでおくことで、4つの思考の偏りがゆるみ、少しだけ楽に生きやすくなります。また、あなたがピンチに陥ったときに、他人のヘルプを借りられる力になっていくのです。

 現代人の多くは高等教育を受けています。そこでは問題を論理的に解決するトレーニングを積んできました。何かトラブルがあったときは、その問題を解決することで不安を解消することも覚えてきたのです。

 だから何かの選択をするときは、必ず論理的理由が必要です。

 ただ、この理解だと、問題を分析して解決しさえすれば、不安がなくなることになりますが、人生はそれほど単純なものではありません。

 実際は、不安は現実問題の難易度によってだけで生じるのではありません。