──ならば、身近なところだと、どこから変えたらいいでしょう? 私もすごくメンタルが弱いので、すぐにできることだとありがたいのですが……。
森:「言葉」「行動」「習慣」の3つの視点で考えることです。言葉遣いやちょっとした行動、いつも何気なく行っている習慣などのうち、まずは自分がやりやすいものでいい。「これならできそう!」と思えるような小さなことから変化を起こしていって、少しずつハードルをあげていくのがいいんじゃないでしょうか。
「言葉」であれば、言葉遣いや発声、話し方でずいぶん印象は変わりますよね。女性の刑事や若い刑事だと犯人になめられてしまうことがあるので、言葉遣いをちょっと強めにするなど、見せ方を工夫することもよくあるんです。「大きな声で話す」だけでも印象は全然違います。自信があるように見えるんですよね。
──日常生活でできることでいいんですね。
森:「ヤクザ担当刑事は、だんだんヤクザに似てくる」というのもよくあることです。パンチパーマでごつい指輪をしていて、ヒゲが生えていて……となると、見た目は本当にヤクザそのもの。格好から入って、ある意味ハッタリをかましているわけです。
僕も、以前ヤクザの事務所に行ったときは緊張しましたし、ビビりました。でもそれを相手に見せるわけにはいかないので、あえて横柄な態度をとるように行動を変えて、わかったような口の聞き方をするように言葉遣いを変えてみたんです。
最初はそれくらいでいいと思うんですよ。べつにいまからバンジージャンプをしろって言ってるわけじゃない。いまメンタルがどん底まで落ちている人にとって、大きな変化は刺激が強すぎると思うので、「ここならギリ行ける!」というラインからでいい。
1日10秒でOK! メンタルを鍛える習慣術で、
メンタルが見た目に追いついてくる!
──メンタルがどん底の状態で、「何もやる気が起きない」という人も多いんじゃないかと思います。たとえば、仕事で大失敗したあと「自分はなんてダメな人間なんだ……」と自己嫌悪に陥ってなかなかやる気が復活しない、というケースもよくありますよね。そんな状態でもできるメンタルトレーニング法はありますか?
森:メンタルが弱っているときと、あえて逆のことをしてみるというのはどうでしょう。たとえば、犯罪者って、メンタル弱っている人も多いんですよ。手錠をかけられて背筋が曲がって、下を向いて……っていう人、テレビで観たことありませんか? 私は刑事として、相手の心理を読むために非言語コミュニケーションの研究もしていました。それでわかったのは、人間はやましいことがあって「顔を見せられない」という意識があるとつい下を向いて歩いてしまう、ということ。だったら、あえてその逆をやってみるといい。
・顔が曇ってしまうのなら笑う
・自信がないなら顔を上に向ける
・ボソボソ話す癖があるなら、発声のボリュームを大きくする
そうやって自分に変化を起こすと、少しずつ周りの反応も変わってくる。「あいつ、なんだか楽しそうだな」とポジティブな印象を与えられると、結果的に周りの人も笑顔で元気に話しかけてくれるようになる。
はじめは「そんな明るい気分になれないよ」と思うかもしれない。でも、無理矢理にでも「言葉」「行動」「習慣」で自分の見せ方を変えるようにしていれば、あとからメンタルが見た目に追いついてくるんですよ。
だから、いまつらい状況が続いていて、誰とも会いたくない! みたいに落ち込んでしまっている人であれば、
・出勤前、鏡の前に立って口角を上げ、笑顔をつくる
・つねに背筋をのばし、上を向いて歩く
・コンビニで買い物したとき、店員さんに「ありがとうございます!」と大きな声でお礼を言う
など、これくらいの小さな変化からスタートしてみましょう。これなら、1日10秒でもできますよね。
もし自信をもっともっとつけたいと思うなら、背伸びした目標を立てて小さな成功体験を積み重ねていく、というのもおすすめ。「今日は3人の人に『おはよう』とあいさつする」などの目標を立てて、それを毎日少しずつクリアしていく。そうすると、自分の自信になり、メンタルも保たれてくるでしょう。