実際には上場企業の株式を経営権が手に入るところまで買い占めるのは難しいので、ファンドはこういった会社の株をある程度まで買い進めて、
「資産を切り売りして配当を増やせ」
と株主総会で経営陣をゆさぶるわけです。
まあこのレベルの攻防はハゲタカ的なファンドとそれほど有能ではない経営陣との戦いになるので、日本経済全体への影響としては重要な話ではありません。
問題は、今回のアリマンタシュオン・クシュタールのセブン買収のようなケースです。
セブンの買収提案が起こった背景は?
経営陣にも責任はある
セブン&アイ・ホールディングスは日本を代表する優良企業ですが、それでも海外の投資家の中には「自分が経営したらもっとうまく成長させることができる」と考えるひとたちが結構な数いらっしゃいます。
セブン・イレブンという非常に強いビジネスモデルを持っていることで、投資家としては中国・アジアにもっと速く大きく店舗展開を行えるはずだという期待があります。いまごろはアジア全体の小売り市場において支配的なポジションに届いているはずなのに、実体はそうなっていない。ここに海外の投資家の不満があります。
これは、実はセブンの経営陣にも責任があります。
セブンの経営陣は昨年は西武百貨店池袋店がヨドバシカメラになることを想定した西武・そごう株の売却にかなりのエネルギーを注いでいました。そして今年はイトーヨーカドーの大量閉店に力をいれています。
情報が限定的にしか入ってこない海外の投資家から見れば「重要度の低いアジェンダに時間を使いすぎ」「自分が意思決定したほうが成長が早くなる」と考える人がたくさん出てくるわけです。
ただセブンの場合は時価総額が直近で5.7兆円ありますから、それを買収できる企業はほとんどありません。今回のアリマンタシュオン・クシュタールの提案をうまくやり過ごせばそれ以降は経営陣は安心できることでしょう。