ポイント2
企業防衛がやりにくくなっている
日本企業に海外から買収提案が来た場合、経営陣はどうそれを防衛すればいいのでしょうか。
ちょうどこの原稿を書く前日に、また大きな企業買収提案のニュースが入ってきました。ファクトリーオートメーション分野などに強みを持つ富士ソフトへの買収提案です。
富士ソフトは時価総額は直近で6500億円ほど。玄人好みの独立系優良企業なのですが、この2年ほどの間、物言う株主に頭を悩ませていました。シンガポールのファンドに2割超の株を持たれてしまったのです。
株主総会では過去2回、ファンド側の役員の選任案を否決してきたのですが、ファンド側からは創業家中心の企業統治について揺さぶられ、活用度の低い不動産の売却などの提案をつきつけられてきました。
この対立は外部から見るとやや膠着状態に陥っていたようで、ファンドからの提案で経営陣はMBO(マネジメントバイアウト)によって株式を非公開化、上場廃止することで経営に集中しようと考えたのです。
創業家は経営に集中できるようになりますし、ファンドは持ち株をプレミアム価格で売却できるので儲けを出せます。実質的な手打ちです。
株式の非公開化にあたってはKKRという有力ファンドをパートナーに選び、このシナリオで事がスムースに進むかと思われていました。そこにKKRのライバルのファンドであるベイン・キャピタルがKKRよりも高い株価での対抗の買収提案を持ち掛けてきたのです。
まだ提案の中身はわかりませんが、展開によっては創業家が考えていたような経営に専念できる状況にはならないかもしれません。
さて、以前はこのようないわゆる敵対的な買収提案を経営陣は比較的却下しやすい状況がありました。その状況が変わりつつあります。きっかけは社外取締役のプロ化です。