ポイント3
日本の国力低下

 さて、日本の優良企業にこれから先、どんどん買収提案が持ちかけられるかもしれないという話ですが、一歩俯瞰をするとさらに重要な話がもうひとつ潜んでいます。

 それが、日本の国力低下です。

 国の経済力を測る重要な尺度にひとりあたりGDPがあります。日本はバブル経済の時代はこの指標で世界一だったのですが、現在は世界の30位台までランクを下げています。

 さて、ひとりあたりGDPで世界各国のランキングをながめると、日本は世界の第三グループに属していることが見て取れます。

 世界経済の先頭を走る第一グループはひとりあたりGDPが8万ドルを超える国々です。アメリカやシンガポール、中東のカタールなど8カ国ほどがそれにあたります。これらの国々の共通点は世界中から投資マネーが集まる点です。

 第二グループはひとりあたりGDPが5万ドル前後の比較的経済が順調な国々です。ドイツ、イギリス、オーストラリア、そしてアリマンタシュオン・クシュタールの本国であるカナダもここに入ります。

 そして日本が新たに所属することになった第三グループは、ひとりあたりGDPが3万ドル台で、イタリア、スペインのような落日の大国と、エストニア、ブルネイなどの新興国がここに入ります。東アジアではちょうど日本、韓国、台湾がこのグループで肩を並べています。

 こうなったひとつの要因は円安ですが、もうひとつの要因は日本が失われた30年間経済成長できなかったことです。

 ここが問題で、要するに世界の経済成長に置いて行かれた結果、周囲に日本よりも裕福な国の数が増えて、現在では30カ国を超えているということです。その気になれば日本企業を造作もなく買える投資家が、それらの国々にどんどん増えているのです。

 日本企業だってグローバルサウスに進出するにあたって現地の優良企業がM&Aできるのであれば、買収して手っ取り早く進出しようと考えるでしょう。それと同じで、アジアに進出したい欧米企業にとっては日本企業は今、とても手軽な進出手段になっている。その理由が日本経済自体が凋落したためだということです。

 だとすればこの脅威、嫌な形で長く続きそうです。それも日本経済がふたたび成長できるまで。そう考えると今回の事態、なかなかに深刻です。