「お金なんて持っていても仕方ない」
そう語るのは、起業家・UUUM創業者である、鎌田和樹氏だ。2003年に19歳で光通信に入社。総務を経て、当時の最年少役員になる。その後、HIKAKIN氏との大きな出会いにより、29歳でUUUMを設立。「ユーチューバー」を国民的な職業に押し上げ、「個人がメディアになる」という社会を実現させる。2023年にUUUMを卒業後、初となる著書『名前のない仕事 ── UUUMで得た全知見』では、その壮絶な人生を語り、悩めるビジネスパーソンやリーダー層、学生に向けて、歯に衣着せぬアドバイスを説いている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、これからの時代の「働く意味」について問いかける。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
やりたいことを口にする
僕が、「経営者」という、名前のある仕事を目指していった話です。
ユーチューバーのマネジメント業がうまくいきはじめ、半年で黒字になりました。
そして、2014年4月には、ベンチャーキャピタル(VC)のジャフコから5億円を調達します。
VCからお金をもらうということは、上場を視野に入れるということです。
契約書には、「○年までに上場を目指すこと」と書いてあります。
僕は、「これ、努力目標に変えてもいいですか?」と言い、最終的には「上場に努めること」という表現にしてもらいました。
5億円と聞くと、とてつもない額ですが、嬉しいわけではありません。調達しないでいいならそれに越したことはない。
「なんのために5億円いるの?」とつっこまれても、「もらえるなら、もらいたい」というのが本音で、建前として「マーケティングのためです」と答えました。
ただ、お金はあると便利なのはたしかです。
僕の仕事の中での気づきとして、「お金は積極的に使ったほうがいい」ということがあります。
お金の価値は、使った人にしか絶対にわからないということです。
「これが1000円の飲み物の味なのか」
「これが10万円のフルコースなのか」
「クリエイターに100万円を渡すと、こんな企画ができるのか」
「会社が1000万円を使うと、こんなビジネスが始められるのか」
「さらに、1億円だと、この規模のことができるのか」……
というように、本当にその金額を使うことによってわかってくるものです。
お金なんて、ただ持っていても仕方ありません。
そして不思議なもので、懐が温かくなると使えるようになってきます。
僕は、どうにかして世の中にUUUMの存在を知ってほしかったので、ヤフーと業務提携を結んだり、ソニーと組んでフィギュアを出したりしました。
瀬戸弘司さんから、「フィギュアを作りたい」という話があったのと、ソニーが「ちょうどフィギュアのチームが会議でユーチューバーの話をしている」というタイミングが重なったのです。
やはり、日頃から「やりたいこと」を口に出すということは大事ですね。
(本稿は、『名前のない仕事 ── UUUMで得た全知見』より一部を抜粋・編集したものです)
起業家、UUUM創業者
2003年、19歳で光通信に入社。総務を経て、店舗開発・運営など多岐にわたる分野で実績をあげ、当時の最年少役員になる。その後、孫泰蔵氏の薫陶を受け、起業を決意。ほどなくして、HIKAKINとの大きな出会いにより、2013年、29歳でUUUMを設立。「ユーチューバー」を国民的な職業に押し上げ、「個人がメディアになる」という社会を実現させる。2023年にUUUMを卒業。『名前のない仕事 ── UUUMで得た全知見』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。2024年9月から、新事業として子どもの体験格差にスポットをあてたプロジェクト「ピペプロ」を始動。