違法度合いは興味深かった。当初の建築確認図面では道路境界から4メートルセットバックして建物があるはずなのに、現地に行くと、どう見ても2メートルしかセットバックがない。少しでも大きいものを造れば貸す部分が増えて、ビルのキャッシュフローが大きくなる。だからセットバックは小さく、建物は大きく。

 別のビルでは図面上は11階建てのはずが、13階建てになっている。これも構造上の問題がなければ、貸せる面積を大きくする常套手段。消防法上の問題も多く発見。市の建築局や消防署ともずいぶん打ち合わせを重ねた。

 しかし大半の違法部分は物理的な修復は不可能なので、例えば12階と13階の貸室は空室にし、玄関ドアを撤去してそこをコンクリートブロックで塞ぐようにし、建築基準法通りの面積しか貸し出さないようにするとか、避難階段が足りない場合(二方向避難ができない場合)は各貸室に避難用の梯子(「オリロー」という商品名)を設置するとか、いろいろな細かいことをやった。

違法物件は売れるのか?
商習慣の違う大阪では売れる

 信託銀行には違法物件やテナント汚染物件は信託受託してもらえない。しかし、この52棟150億円は登録免許税だけでも7億円もかかる。これを信託方式にできると信託登記費用を7500万円に抑えられる。