麒麟・川島明「五十鈴川のせせらぎ」
タレントにも洗濯機ラバーは多い。
「伊勢神宮の五十鈴川のせせらぎを眺めているような感情です。衣類と同時に心まで浄化されていきます。唯一無心になれる瞬間です」
そう熱っぽく語ってくれたのは、お笑いコンビ麒麟の川島明さん。特に2度目の「すすぎ」が好きだという。
「汚れの落ちた衣類たちがまた新たな生命の水を得て生まれ変わっていくその瞬間がたまりません」
5歳の頃から、まわる洗濯機が好きだった。
「母親が洗濯機を使用するたびに、チャンスとばかりに蓋をあけてじっと見ていました。リズムよく動くモーターの音に、合いの手のようにはさまれる水の音。そこに香る洗剤の香りに、時間を忘れて眺めていたものです」
洗濯機とはもう一人の「相方」
洗濯機とはどんな存在なのか。思い切って聞いてみた。
「若手の頃、最初に買った家電はドラム式洗濯機。1日の終わりにドラム内に服を入れ、『洗い』が始まれば缶ビールをあけて洗濯機を眺めながら晩酌をする。いわゆるこれは『洗濯』というか『打ち上げ』。この時間が本当に好きだったので、洗濯機は、もう一人の『相方』です」
洗濯機を愛するタレントはほかにもいる。マツコ・デラックスさんは、テレビ番組でこう語っている。「私も洗濯機を見るの。この間、乾燥まで全部見ちゃった」「(心が)穏やかになる。すごい安定する」。同じ番組に共演したシンガー・ソングライターの星野源さんも、「(洗濯機は)焚き火のような効果がある」と共感していた。
洗濯機に隠された驚きの効果
洗濯機は主に衣類を洗うための家電で、その過程で「回転」しているだけだ。ただそれだけなのに、なぜ私たちは心をつかまれ、癒やしを感じてしまうのだろうか。神奈川大学の人間科学部教授・心理学者の杉山崇さんはこう語る。
「これは『眼球運動』が関係していると思います」
「眼球運動」とは簡単にいえば、「目が動くこと」だ。杉山さんは、眼球と脳の位置の近さを指摘する。
「目は、脳と物理的に近く、網膜の奥の視神経で脳につながっています。『目は脳の出張所』『脳の窓』などといわれますが、生理学的に見れば、網膜は脳が成長する過程で飛び出た脳の一部であり、眼球は『脳からはみ出している状態』とみることもできます。そのため、眼球の動きは、脳の活動に非常に大きな影響を与えるのです」
緊張状態によりまばたきの回数が増えたり、興味を抱いたものを見た時に瞳孔が開いたりといった反応も、眼球と脳が連動していることで起きるのだという。
では、洗濯機を見て、癒やされてしまうのはなぜか。