節約志向で格安ショップの人気が急上昇

 以前の中国なら、政府が何らかの経済対策を実施すると、消費者心理は明確に上向いた。しかし、不動産バブルが崩壊して以降、現在はそうした様子が見られない。むしろ、価格の下落に敏感に反応する消費者は増えており、「安売り」に商機を見出いだすケースが出てきている。

 例えば、IT大手のアリババ・グループは、家計の節約志向への変化に機敏に対応している。低価格商品専門のアプリ「淘宝(タオバオ)特価版」の、実店舗チェーンを展開すると発表したのだ。

 他にも、中国版100円ショップと呼ばれる、雑貨店大手の名創優品(メイソウ)、ネット通販大手の京東集団(JDドットコム)、PDDホールディングスが運営するECサイト「Pinduoduo」も、低価格戦略を強化している。

 現状、低価格戦略の小売企業の業績は、アナリスト予想を上回るものが多い。上海のような大都市でさえ、「3元(約60円)ショップ」と呼ばれる、ディスカウントストア利用客が増えているという。

 また、外食分野でも、中国のコーヒーチェーン瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)が低価格カフェラテを武器に、米スターバックスよりも優勢だと報じられている。

 対して、高価格帯の商品の需要は減少傾向にある。化粧品メーカーの米エスティローダーは、中国の需要減少で業績不振に陥り経営トップの交代が発表された。LVMHモエ・ヘネシー・ルイ ヴィトンも同様に、中国での伸び悩みを理由に成長率が鈍化している。また、グッチを傘下にもつ仏ケリングは、値引き競争でブランドイメージの毀損(きそん)に直面した。中国を代表する高級酒である貴州茅台酒も売り上げが減少しているという。

 不動産バブル崩壊後、不良債権対策が遅れたことから、中国の不動産価格の下落が止まる兆しは見えない。7月、大手不動産100社の新築住宅販売額は、前年同月比19.7%減だった。6月(同17%減)から減少率は拡大した。

 これまで中国経済を支えてきた、マンション建設を増やすことで基礎資材や自動車、家電などの需要を生み出し、雇用を増やす手法はもう通用しない。土地の譲渡益で地方政府が歳入を確保し、経済成長を支える手法も過去のものだ。