総合商社は今、人材確保のために女性が活躍できる職場づくりに力を入れている。しかし、男性社会だった商社が一挙に働き方などを改めるのは困難だ。現状はいかなるものか。公開情報を基に、七大商社のジェンダーギャップを明らかにするとともに、男女格差解消に向けた課題に迫った。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)
男女間格差の是正目標はあるが
達成までには長い道のり
総合商社にとって、女性社員が思い描くキャリアを諦めさせない仕組みづくりは急務である。
例えば、丸紅や伊藤忠商事は、生理や更年期障害といった女性特有の健康課題をテクノロジーで解決するフェムテックを、他商社に先んじて導入している。
男女間格差の是正に向けた目標の設定も相次ぐ。「総合職の新卒採用の男女比を5:5にする」(丸紅)、「新卒採用や管理職において女性比率を、段階的に30%以上に引き上げる」(三菱商事)といったように意欲的な目標も多い。
こうした動きが活発なのは、単に女性活躍推進という社会の潮流に沿うためだけではない。
ある五大商社の人事部門幹部は「(ジェンダーギャップの解消は)究極的に言えば、生産性向上につながる」と強調する。
より良い待遇ややりがいを求めて商社を去る若手も少なくない。だが、男性だけでなく、女性の優秀な人材を引き留められれば、商社のブランドや生産力を維持、向上できる。
しかし、である。有価証券報告書のサステナビリティー情報を分析すると、男女間格差の是正において、他業種よりも遅れている商社の実態が明らかになった。
次ページでは、「女性管理職比率」や「男女間賃金格差」といった指標から、七大商社の女性活躍推進の現在地を明らかにするとともに、今後の課題に迫る。