クローズアップ商社Photo by Shuhei Inomata

ダイヤモンド編集部は、伊藤忠商事の賃上げを巡る内部資料を入手した。同資料には、財閥系商社に肩を並べるための意気込みと、来年度の部長級の年収を最大4000万円超に引き上げる旨が記してあった。社外からは羨望(せんぼう)のコメントが寄せられているが、恩恵を受けるはずの社員からは冷ややかな声も上がっている。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)

「昇進しても年収4000万円だけか」という
伊藤忠の社員の声も……

「ここ数年の資源価格高騰による財閥系商社の好業績の結果、当社との給与差が目立つようになってきた」

 伊藤忠商事の内部資料には、三菱商事や三井物産らとの給与格差が開いたことを憂慮する一文から始まる。

 資料に記載されている給与改定の中身は、2024年度の純利益計画値、8800億円を達成した場合、25年度から年収を平均で10%アップするというもの。

 さらに、資料後半では急激な報酬の増額に踏み切った理由について「財閥系商社との格差を埋めることを優先した」と、三菱商事や三井物産への強い対抗意識をあらわにしている。

 伊藤忠関係者によると、文書の内容は事実とのこと。本来は社員向けイントラネットなどで共有する資料だった。同社広報部は「内容は労働組合と交渉中で決定事項ではない」としている。

 この社員への大盤振る舞いに、社内では歓迎の声が上がっているだろうと想像し、取材をしたところ意外なことが分かった。実は、社員からはニヒルな声も上がっている。というのも、増額の恩恵を大きく受けるのはごく一部の人間だけだからだ。

 次ページでは、給与改定の実額や、伊藤忠社員の反応を明らかにする。