「あなたの職場では、言った人がやるのが当たり前になっていませんか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で、働き方改革、組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」には共通する時代遅れな文化や慣習があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変える必要があると気づきました。
その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな文化」を変えるためにできる、抽象論ではない「具体策が満載」だと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「提案者が損をする職場」の問題点について指摘します。
「言ったもの負け」の文化がある組織
職位が上の人や立場が強い相手に対して意見しづらい背景に、「怒られるのが怖い」「否定されるのが怖い」などがある。一方で、否定されないからといって必ずしも意見が出しやすくなるとは限らない。
次のような文化が色濃い職場では、メンバーは意見や改善提案を言い出しにくい。
「言ったもの負け」である。
語感からしてネガティブ感200%なこの言葉。意見や提案をしようものなら言った本人が実行する羽目になる。または、すべての責任を押し付けられる。その文化を揶揄(やゆ)した言葉である。
反対されない代わりに、すべてを丸投げされてしまう。これも意見を言い出しづらくする大きな要因だ。
筆者は日本の大企業を複数渡り歩いてきたが(現在は顧問として関わっているところもある)、行く先々で「ウチには“言ったもの負け”って言葉があってね」と、入社早々に親切な先輩方から言われた。さすがに3社4社で言われると、「言ったもの負け」はその組織独自の文化というより、もはや日本の大企業のお家芸ではないかと思わざるを得ない。そのくらい「言ったもの負け」は多くの組織に根付いてしまっている文化である。
気づける人たちの力を無駄にすることに
提案者に実行を押し付けられてしまっては、ちょっとした気づきや改善点も口にしにくくなる。
日常業務が多すぎてキャパシティオーバーしている、時短勤務で稼働できる時間が限られているなど、課題の解決や改善に力を注げない人たちもいる。そういった人たちが物言えぬ状態をつくってしまうのは不健全であり、組織にとってももったいない。
なおかつ、提案者がその課題を解決する能力や適性を持ち合わせているとは限らない。全体を俯瞰して課題に気づける人と、与えられた任務を完遂するのが得意な人は別だ。優秀なプレイヤーが、優秀な改善推進者とは限らないのである。
「言ったもの負け」文化の放置は、チャレンジはもちろん、小さな改善や提案をも現場から遠ざけるのだ。