提案者と実行者の分離を周知しよう
本人に明確にやりたい意志や能力がある場合(または組織として人材育成の意図がある場合)は除き、基本的に提案者と実行者は分離したほうがよい。
これは組織の課題解決や業務改善の基本である。まずは、この概念を周りに知ってもらうようにしてほしい。
「自分では対処できないのですが、気になったことがありまして……」
このように、正直かつ真摯に伝える。その一言で、提案者と実行者を分離する発想を周りに促すのだ。
とはいえ提案者と実行者を分離すれば、すべてが平和に解決するわけでもない。
たとえば、あなたが問題や課題を指摘し、その解決を別の誰かが担うことになったとする。解決担当者は「余計な仕事が増えた」とネガティブに捉えるかもしれない。その体験が積もると「仕事が増えるから余計なことを言うな」と同調圧力が形成され、迂闊に問題や課題を指摘したり改善提案したりできない空気が濃くなっていく。
その状態を回避するためには「メンバーの仕事に余白/余裕を生む」「改善や解決する行為を評価する」といったマネジメントも欠かせない。
「言ったもの負け」文化を逆手に取る
「言ったもの負け」ではなく、なるべくなら「言ったものが輝く」前例を創りたい。
「言ったもの負け」は、裏を返せば「言った人に任せてもらえる」文化と捉えることもできる。
つまり提案したあなたが主導権を握って、課題解決や価値創造に取り組むことができるのだ。ある意味、美味しい状態であるとも言える。この文化を好機と捉えて活用するために、筆者が提言したい行動は以下の2つである。
・ここぞとばかりに手を挙げよう
筆者もこのやり方で業務改善や組織開発の実績を積み上げてきた。「言ったもの負け」文化も使いようなのである。
こうしてあなたが成果を出してから、「言ったもの負け」の文化を変えるためのマネジメント改革に着手すればよい。ただし手を挙げたからには覚悟を決めて本気で取り組もう。
・提案者と実行者を分けて考える意識を持ってもらう
・「言ったもの負け」を利用して課題解決や価値創造する
・本気で取り組みたいテーマを見つけ、進んで手を挙げる
(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。