明るく弱音を伝える

 ぼそぼそと「つらい、つらい、つらい……」と呟くのと、苦笑交じりで「いやー、この作業なかなかつらいですねー」と言うのと、どちらが受け入れられやすいだろうか。

 深刻かつ暗いムードで大変さやつらさを伝えると、それだけで場の空気が暗くなったり、過度に重たく受け止められてしまったりする。なるべく明るい言い回しや表情で大変さやつらさを表現しよう。つらさを吐き出すことが目的であれば、これくらいさらりと伝えるのが大事だ。

 すると相手は「大変そうだね。飴でも舐める?」くらいの温度感で対応できて、場が和みつつ会話が終了する場合もある。もちろん事態が本当に深刻な場合は、それなりに深刻な表情で伝えよう。

「どうしてほしいか」も添える

「大変だ」「つらい」の後に、相手に期待する行動を添えてみよう。

「今週、出張続きでつらいです。どなたか経費精算を手伝ってくれたら嬉しいです」

「問い合わせが集中していてつらいです。回答の文案を一緒に見てもらってもいいでしょうか?」

 このように、あなたの大変さやつらさに対して相手にしてもらいたい振る舞いがあれば、期待を明確に示す。そうすれば弱音が課題に変わる。ただ「大変だ」「つらい」と言うよりもポジティブに伝わり、なおかつ相手に過度な気遣いをさせなくて済む。

 また、ときには相手に何も求めていない旨を明示するのも重要だ。
 
筆者がかつて勤務していた職場では、部長の「相談に乗ろうか?」の問いかけに対し、「あ、大丈夫です。ちょっと吐き出したかっただけです!」で終わることができたのもよかった。別に解決策を考えてほしいわけではなく、単につらさを吐き出したい、聞いてほしい。そんなときもある。それなら「この作業なかなか大変です。心折れそうです。あ、吐き出したいだけですから聞き流してください」と伝えてみよう。

 なんでも重たく受け止められてしまうと、それはそれで本音や弱音を言いにくくなるものだ。メンバーとしては重苦しさや申し訳なさを感じてしまう。受け止めるとは、すべてのものごとに同じ温度感で向き合うことではないのだ。

相手の弱音を一緒に分析・分解する

 あなたが大変さやつらさを率先して発するのみならず、誰かが弱音を吐いたら、話を聞いてその大変さやつらさを一緒に分析・分解しよう。
 
何が大変なのか、どうすればつらさが和らぐのか。話を聞きながら一緒に悩む。その対話と行動の積み重ねが、大変さやつらさを一人で抱えず、チームで相談して解決する文化、および改善体質を育む。

 もちろん、本人は単につらさを吐き出したいだけ、話を聞いてもらいたいだけの場合もある。あなたの「相談に乗りましょうか?」の問いかけにのってこなければ、それ以上深追いするのはやめよう

一歩踏みだす!

 ・「大変だ」「つらい」を明るく発する
 ・相手に「どうしてほしいか」「ほしくないか」と希望を添える
 ・他者の弱音も受け止め、一緒に分析・分解する

(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)

沢渡あまね(さわたり・あまね)
作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。