「どれが面白いか」で判断してみよう

 たまにでもかまわない。複数の選択肢が場に提示されたとき、「どれがいちばん面白いと思います?」「どうせなら面白いほうを選びましょう」と提案してみよう。

 筆者は過去に仕事をした企業や共同研究をしている大学で、次のような場面に遭遇した。
 ある企業で業務改善の検討をしていたときのこと。複数の改善策が提示され、どれに取り組むかチームメンバーと一緒に腕を組んで悩むこと数十分。どれがもっともやりやすいか。いや、むしろ難易度の高いものに取り組むべきではないか。どれがもっとも効果が出そうか。しかし見方によってどれが効果的かの判断も異なる。

 ううむ。
 そのとき、マネージャーがこう言った。

「どれがいちばん面白いと思いますか?」

 その瞬間、場の空気が変わった。

「面白さを持ち込んでいいんだ」
「面白いか面白くないかの観点で選んでもいいんだ」
「その発想はなかった!」

 険しかった皆の表情が一瞬ぽかんとし、しばらくしてぱっと明るくなり、一気に議論が進んだのを今でも覚えている。

面白いから、頑張りたくなる

 ある大学の教授・准教授と研究テーマを検討していたときにも、同様の場面に遭遇した。

「どうせなら、面白いほうを選ばない?」

「そのほうがやっていて楽しいし、続けられるでしょう」

 教授のこれらの言葉が議論を後押しし、「じゃあ、このテーマ案で進めますか!」と満場一致。今後の活動に対する高揚感と効力感も高まった。

 毎回でなくてもかまわない。議論が膠着(こうちゃく)したとき、選択肢を選ぶためのものさしの一つとして「面白さ」を提示してみてはどうだろう。

 難しい顔をしてデータや資料を眺める人ばかりの会議から、面白い仕事が生まれるだろうか。あなたがマネージャーや意思決定者なら「どれが面白いと思う?」と、メンバーなら「面白いほうを選ぼう」と発してみよう。それで乗ってくる人がいるならば、その職場は、その仕事はもっと面白くなるかもしれない。

 面白いから、頑張りたくなる。もっとこだわりたくなる。こうして、作り手が面白がってやった仕事は、受け取る人にもその面白さや感情が伝わる。
 反対にやっつけでやった仕事は、相手に見透かされてしまう。仕事の面白さは現場の人間にしかわからない。面白さを大切に!

一歩踏みだす!

 ・何かを判断する際、「面白いほうを選ぼう」と提案してみる
 ・世の中に面白がってもらうために、作り手も面白がる

(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)

沢渡あまね(さわたり・あまね)
作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。