(4)責任回避の問題

 通話の内容が記録されにくいという電話の特性を利用して、後からの責任追及を避けるために文書ではなく電話を使うことがある(録音される可能性はあるが)。特に、デリケートな話題や責任の所在を明確にしたくない場合に電話が選ばれる。メールやチャットは証拠が残るので、使わない。よって、なんでも電話だけで済まそうとする会社やビジネスパーソンはかなり危険である。

 電話をしてくる理由は、ざっと思いつく限り、こんなところだろう。とはいえ、電話を使った方が良いときもある。電話を通じて即座に状況を把握し、必要に応じて指示を変更しなければならない緊急対応のような場合だ。複雑な指示や多義的な情報は文章だけでは瞬時に意図が正確に伝わりにくいことがあり、誤解が生じるリスクがあるので、電話で相手の反応を見ながら、その場その場で逐一確認を取るように詳細に説明をして、誤解を最小限に抑えるのである。

 しかしながら、上記のような場合以外は、基本的にはメールやチャットなどのテキストのやりとりにしてもらいたい。ただ、こうした要望は、電話をかけてくる人も頭では分かっているのだろうと思う。にもかかわらず、電話をかけてくる人が絶えない真の理由は何か。私は、次のような3つの理由があるのではないかという仮説を持っている。

それでも電話してくる人が絶滅しない
「真の理由」とは

(1)情報をコンパクトにまとめる技術がない

 電話しか使わない人は、文書やテキストで情報を簡潔にまとめるスキルが決定的に不足しているのではないか。書けと言われると、書くために多大な時間がかかり、しかもアウトプットの質が良くないので、相手に誤解を与え、うまくいくものも頓挫してしまう。それで電話から離れられないのである。

 ビジネスでの一般的な文書を書く技術は、少し訓練すれば誰でも身につけることができる。企画書のフォーマットの順(提案内容、提案の背景、具体的な内容……)に沿って、整合性を持たせて書けばよいだけだからだ。

 とはいえ、これらの情報が頭の中で整理されていない人は、明確に書くことができず、書いても相手を混乱させ疑念を抱かせる。こういう人は電話を使って、なんとなく雰囲気でごまかしながら話をまとめようとする。

 要するに、ビジネスパーソンとしての基礎技術の習得を怠った結果が、電話への依存につながっているということだ。