東京都が2024年度から導入した、私学を含めた高校授業料の実質無償化における所得制限の撤廃。昨年12月の小池百合子都知事の表明から導入まで間がないだけに24年度の入試への影響は軽微とみられていた。ところがふたを開けてみると、受験動向に“異変”が発生した。特集『東京&大阪で高校授業料無償化 常識崩壊!高校入試最前線』(全8回)の#4では、東京の24年度高校入試の分析とともに、さらなる激変が予想される25年度入試を占う。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
東京都の高校授業料の無償化の対象者
私立高校だけで6万人→16万人に拡大
「2024年度入試への影響はないと思っていたが、ふたを開けてみると想像を超える動きがあった」――。首都圏の大手受験塾、早稲田アカデミーの望月悟史・高校受験部長は、直近の24年度入試をそう振り返る。
昨年12月、東京都の小池百合子都知事が都議会で、高校授業料の無償化について24年度から所得制限の撤廃を打ち出した。これまでも都立高、私立高共に、年収910万円未満の世帯は実質無償だったが、今回、保護者が都内在住であれば都外の私立高に通学する生徒も含めて全員、高校授業料が実質的にタダになった。
高所得者層を対象とした政策だが、その恩恵を受ける都民は想像以上に多い。昨年度まで無償化の対象だった生徒数は、私立高で約6万人(1~3年生)。これが一気に約16万人へとおよそ10万人も増えたのだ。
ただ、私立高の一般入試本番まで2カ月余りに迫った時期のサプライズ発表だっただけに、高校受験塾関係者の間では24年度入試への影響は軽微とみられていたという。
ところがだ。「時期的に『受験校選択』にこそ影響がみられなかったものの、「都立高入試の『受検率』に加え、合格後の『進路選択』において、これまでにない動きが起きた」と望月氏は言う。
来る25年度入試以降、受験校の選択にも大きな影響が出ることが確実視される中、東京都の高校入試の常識はどう変わるのか?
次ページから、24年度入試で起きた異変を詳しく見るとともに、本番まで半年を切った25年度入試の行方を占う。さらには、近い将来、都立高の大規模な統廃合が見込まれるため、その対象になる可能性が高い「定員割れ都立高校リスト」を作成した。ぜひ受験校選びに役立ててほしい。