定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる! マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されました。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。

【税理士が教える】意外な盲点! 年金の繰り上げ・繰り下げは「夫婦」合わせて考えないといけないワケPhoto: Adobe Stock

昭和41年4月1日以前生まれの妻は「振替加算」がもらえるラッキー世代

 前項で説明したように、ある一定条件の年下妻がいる場合、夫の年金に「加給年金」がプラスされます。妻が65歳になると、夫の「加給年金」はストップしますが、かわりに妻の年金に「振替加算」がプラスして払われるようになります。これは「年下妻」も「年上妻」ももらえますが、対象となるのは、昭和41年4月1日以前に生まれた妻のみ!

 金額は、2023年現在で、60代半ばの妻だと年4万円前後。生年月日があとになるほど金額は下がり、昭和36年4月2日~昭和41年4月1日生まれの人は年約1万5000円程度です。昭和41年4月2日以降生まれは、残念ながらもらえません。

「加給年金」も「振替加算」も手続きを忘れて、もらい損ねている人も少なくないようです。そんな場合でも、5年間分はさかのぼって請求することができます。年金はとにかく申請しないと始まりません。多少条件が合わなくても年金事務所で相談してみましょう。

お勤め経験がないラッキー世代の妻は「厚生年金」に加入すればさらにおトク

 上記の「振替加算」がもらえる昭和41年4月1日以前生まれの女性は、p69でもふれた「特別支給の老齢厚生年金」ももらえます。これは、65歳になる前にもらえる老齢厚生年金で、昭和36年4月1日以前生まれの男性、昭和41年4月1日以前生まれの女性だけがもらえます。性別と生年月日によって支給開始年齢が異なります。

 ただし、この年金がもらえるのは、今まで1年以上厚生年金に加入したことがある人のみ。お勤めの経験がないなど、一度も厚生年金に加入していない人はこの年金がもらえません。

「もらえるものは、もらう!」というのであれば、1年間だけでもパートなどに出て今からでも厚生年金に加入するという方法もあります。検討してみてもいいかもしれません。

妻の基礎年金は繰り下げる!

 多くの方は、「妻は健康だし自分より長生きしそうだ」と思っていらっしゃるのではないでしょうか? そんな場合は、妻の年金は繰り下げ受給するのがおすすめです。

 会社員だった夫が亡くなると、妻は夫の厚生年金から「遺族厚生年金」と、自分の「老齢基礎年金」を受け取ることができます。「遺族厚生年金」は、夫の老齢厚生年金の75%程度。

 夫婦2人でもらっていた時よりも年金収入は減ってしまいます。これを、妻自身の「老齢基礎年金」の増額でカバーするのです。5年間繰り下げすれば、年金は42%増えます。老齢基礎年金の年額が78万円の人であれば、5年繰り下げ受給すれば、約110万円になります。年間110万円の年金だけなら、税金はまずかかりません。遺族厚生年金部分は非課税です。

 ちなみに、働いていた妻の場合は、「老齢厚生年金」は繰り下げず、「老齢基礎年金」のみの繰り下げがおすすめです。妻が働いていた場合、夫が亡くなると夫の遺族厚生年金か妻の老齢厚生年金かのどちらかしか選べません。

 妻の老齢厚生年金のほうが少なかった場合、夫が亡くなった後に夫の遺族厚生年金を選択することになれば、繰り下げ効果を長く受けられなくなってしまうからです。

 *本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋・編集したものです。情報は本書の発売時のものです。