中途採用者の組織社会化を進めるには、受け入れる側と受け入れられる側、双方による丁寧なコミュニケーションが欠かせない。ここでは、まずは受け入れる側に必要な4つの手法を紹介する。
①積極的に自己開示をする
中途で人が入社した際、一人ひとりが自己紹介するなどお互いの人となりを理解する場を設けよう。
飲み会を開くまでしなくとも、ランチ会をしたり、相互理解のための1on1を個別に設けたりするのもよい。雑談などを通じてお互いの共通点が見つかれば、声を掛け合いやすくなる。
②オンボーディングプランを策定する
新たな人を受け入れる際、筆者は3か月程度のオンボーディングプランを作成して実行してくださいとアドバイスしている。
オンボーディングとは、新たな人がその組織に馴染んで能力を発揮するための定着の取り組みを指す。具体的には、3か月分のカレンダーに中途採用者が「いつ」「誰と」「何の目的で」「どんな仕事や活動をする」「何を教わる」などを明示した活動計画を描く。
これがあるだけで、向こう3か月にどんなことが起こるのか、その組織にどんな業務があって、各々の業務について誰に話を聞けばよいのか、あらかじめどんなことを勉強しておけばよいのかなど、受け入れられる側(中途採用者)が俯瞰できるようになる。先が見えることが大きな安心となる。受け入れる側もいつ何をすればよいのか計画的に考えて動くことができる。
なぜ3か月かというと、多くの業務は3か月(すなわち一四半期)で一回りするからだ。すなわち3か月あれば一通りの業務を経験できる。もちろん3か月でなくてもよい。業務の特性に応じて、1か月なり半年なり適切な期間を設定してほしい。
③メンター役をつけてフォローする
中途採用者を専属でフォローするメンター役をつけるのもよい。
中途採用者は即戦力として期待されるあまり、わからないことを周りの人たちに聞けなかったり、そもそも誰に聞いたらいいかわからず右往左往したりすることがある。上位者に直接聞いてよいのか、あるいは誰かを介して聞いたほうがよいのかなど、お作法がわからず悩む場合もある。
メンター役がいれば中途採用者は悩まずに相談ができる。優秀な人材が、組織のお作法に悩んで時間を無駄にしたり実力を発揮できなかったりするのはもったいない。迷わず聞ける相手の存在は、初心者にとって大きな支えとなる。メンター側も中途採用者が気軽に相談しやすくなるための傾聴や対話のスキルを身につけておきたい。
④中途採用者の声を組織改善に活かす
入社1か月後などに、チームのメンバー全員で中途採用者の声を聞く場を設けてはどうだろうか。
入社して感じたギャップ、良かったこと、改善してほしいことなどを中途採用者に話してもらう。別の組織から来たからこそ気づける違和感は、常態化した悪習慣を改善するための素晴らしいヒントになる。積極的に話を聞き、必要であれば改善しよう。
中途採用者の新鮮な感覚や視点を組織に活かさないのはもったいない!
DROBE(東京都港区)は「KPT(ケプト)シート」を入社1か月目の社員に記入してもらい、社内に共有している。仕事を通じて感じた良かった点(Keep)、改善したほうがよいと思う点(Problem)、改善するためにやってみたいこと(Try)をシートに書き出す。受け入れ側は、外から入った人の視点で自組織の良いところも改善点も知ることができる。
組織のブランドを高めていこう
中途採用者を放置しない組織、塩対応しない組織は、ファンを増やすことができる。
「この会社は中途採用者を大切にする」といった口コミや評判が、さらに良い中途採用者を惹きつける。
組織のファンを増やす行為をブランドマネジメントと言う。組織のブランドマネジメントの観点からも、新たな仲間を大切にしていこう。
・中途採用者を受け入れる側は、積極的に自己開示をする
・3か月分の「オンボーディングプラン」を作成して実行する
・気軽に相談できる「メンター」をつける
(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。