「あなたの職場ではオンライン会議の際、“出社組”だけで議論が進んでいませんか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で、働き方改革、組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」には共通する時代遅れな文化や慣習があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変える必要があると気づきました。
その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな文化」を変えるためにできる、抽象論ではない「具体策が満載」だと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「会議で出社組とオンライン組に分かれる職場」の問題点について指摘します。

人が辞めていく「一体感のない職場」が社内のオンライン会議で「悪気なくやってしまっていること」・ワースト1「出社組」だけで議論が進んでいないか?(イラスト:ナカオテッペイ)

出社組とオンライン組に分かれる会議

 パンデミックが落ち着き、出社かリモートかを選べる企業が増えてきた。
 全員強制的に出社に戻してしまう企業の何倍もよいとは思うが、出社と在宅のハイブリッド勤務形態で悩みのタネとなるのが、会議である。

 よくあるのが、出社組は会議室に集まり、各自のPCや会議室のモニターでリモート組とオンライン会議をつないで行うスタイル。出社している人たちだけでも対面で話した方が効率がいい。その気持ちもわかる。

 一方で、出社組も各自のデスクや社内のバラバラな場所からPCでオンライン会議に入るスタイルの企業もある。リアルとオンラインで分けるのではなく、全員が等しくオンラインで集まる。そのような意図がある。

全員オンラインの合理性

 出社組だけ対面で集まるスタイルは、たしかにその場にいる人たち同士のコミュニケーションはしやすい。一方で、その場にいる人たちだけで話が進んでしまい、場にいない人が輪に入りにくかったり、取り残されやすいデメリットもある。
 
ともすれば出社を好むような価値観の人たちによる同質的な意思決定が促されるなど、議論の多様性が損なわれてしまう。

 一方で全員がオンラインなら、全員が同じ環境で、同じ画面を見ながら場を創っていくことになる。見えている景色(参加者同士の距離と見え方)、画面共有されたスライド、文字情報(チャットなど)、音声などが同じになり温度差や情報格差が生まれにくい。

 加えて以下のメリットもあるだろう。

 ・誰が参加し、誰が発言しているかが視覚的にわかりやすい
 ・チャット機能を併用しての発言や補足がしやすくなる
 ・声とチャットで別々のコミュニケーションを同時進行できる
 ・参加者のコメントや議事録を残しやすくなる

 記録が残れば、後で議論の内容を思い出しやすくなり、その場にいない第三者(欠席者、後にその議題に巻き込みたくなった人など)への共有もしやすくなる。
 会議メンバーの参加意識を高め、意思決定に多様性を持たせたいのであれば、全員オンラインのスタイルが望ましいだろう。

その場にいない人もラクになる方法で

 出社組だけその場に集まるのは「その場にいる人たちがラクになる」コミュニケーションスタイル、全員オンラインは「その場にいなかった人たちもラクになる」コミュニケーションスタイルと捉えることができる。

 空間や時間を超えて共創できる体質になっていくためにも、オンラインミーティングは可能な限り一人1端末で参加しよう。
 
チャット機能なども活用し、発言やコメントをテキストで残すやり方にも慣れていこう。

一歩踏みだす!

 ・オンラインミーティングは一人1端末で入るよう提案する
 ・自分が出社している場合でも、自席や別室などからオンラインで会議に参加する

(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)

沢渡あまね(さわたり・あまね)
作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。