「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。

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親を急かしたくなるときこそ冷静に

「まわりの迷惑になっているんだから早くしてよ!」。レジやATMでまごつく。歩くのが遅い。通行の妨げになるなど、まわりの目が気になるときに出る言葉です。

 こんなとき、実は親自身も「まわりの目」を気にしています。それに、迷惑になっていることにも気づいている場合がほとんどです。

 この言葉の次には、恐らく「ちゃんとして」など「親の行動」を指示するメッセージが出てくかと思います。しかし「指示・命令」で物事が解決するほど、人間は単純ではありません。子どもに「勉強しろ」と言って成績が上がるかといえば、必ずしもそうではないことからもわかるでしょう。

 大切なのは「本質的な問題解決につながる言葉をかけること」です。そのためには、絶対的な安心感を抱かせる「大丈夫、大丈夫。慌てないでいいからね」といったひと言が望ましいです。この言葉で、親は不安なく物事に対処できるでしょう。

 また、もしあなたの指示通りの行動を促したいのであれば、看取者である子ども側が「環境整備」をするのもおすすめです。ATMの操作ならば、入力に必要な情報を事前に伝えておく、空いている時間帯に行く、操作を習熟するまで練習しに行くなどが挙げられます。