生きざまは顔に現れる
仕事を通じて「いい顔」になるには?

 そして最後となる五つ目は、「今までの生き方や来し方を表す顔」です。

 顔は生まれ持ったものでありながら、その人の生き方や個性に合わせて少しずつ変化するものではないでしょうか。その人の生きざまというのは、顔に表れます。クールな人や情に厚い人、あるいはその人が歩んできた環境や人間関係も表れてきます。

 第16代アメリカ合衆国大統領のエイブラハム・リンカーンは「40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て」と言い、ジャーナリストで社会評論家の大宅壮一は「男の顔は履歴書」と言ったのも、こうした意味合いに基づいているわけです。

 私の取材では、毎日モノづくりに真摯に取り組んでいる職人や、自然と向き合っている漁師や農家の人たちの中に、仕事を通じて「いい顔になっている」と感じることもあります。

 採用面接の話に戻ると、まだ人生経験の浅い新卒採用の場では「今までの生き方や来し方」を顔から判断するのは難しい。しかし、一定の年齢を経た経験者採用の場面では、顔や表情からそれまでの来し方を推し量ることができると感じる場面はあります。

 まとめれば、人間は顔によって自らの実存を示し、身分を証明し、互いに第一印象を抱きながら、顔つき(表情)を通してコミュニケーションを重ねて前へ進んでいく生き物です。この顔の五つの役割は、決して口先だけで取り繕えるものではありません。

 若い世代にはこれからの顔の育み方を意識し、ビジネスパーソンの皆さんにはぜひ、顔の役割・機能を有効活用していただくとともに、仕事を通じて「いい顔」を作ってもらいたいものです。

(構成/フリーライター 友清 哲)