こういう形でアメリカに追随してルールをアップデートする慣習が続いているから「日米野球」も「NPBからMLBへの選手の移籍」も可能なのだ。

 ホーレス・ウィルソンは英語教師で野球の専門家ではなかったが、自身も試合に出た。当時のボックススコアも残されているので「記録」に関してもある程度の知識を伝えたようだ。しかし、それはごくごく原始的なものだった。

 日本最古のスコアカードは1896年5月23日に行われた旧制第一高等学校(一高)対横浜外国人チームの試合のものだ。一高野球部員だった草鹿砥祐吉が記入法を考案したとされる。

日本野球のスコアブックは
「早稲田式」「慶應式」が併存

 日本野球の公式記録は次第に整備され、1925年の「東京六大学」の創設と共に、ほぼ現在の形になった。しかし今に至るも、日本には「早稲田式」「慶應式」の2つのスコア記入法が併存している。大部分のアマチュア野球、独立リーグでは「早稲田式」でスコアブックを作成しているが、NPBは「慶應式」だ。Wikipedia(2024年5月時点)によれば95%が「早稲田式」、5%が「慶應式」とのこと。

 早稲田式は、スコアブックの1つ1つのマスに印刷されたダイヤモンドに走者の動きを書いていくので、試合の流れは分かりやすいが、例えば投手がゴロを捕って一塁ベースに入った二塁手に送球する際など1-4と記すだけで、二塁手が一塁に入ったことは記録できない。