第三者管理のリスクを知った上で、導入には十分な検討と慎重な判断を

 先日、某大手管理会社にヒアリングしたところ、現在、多くの新築マンションで、管理会社による第三者管理方式がデフォルトで設定されているという。ホテル暮らしと同様に、お金だけ出していれば安心して暮らせる――そんなイメージで新築マンションを購入する層が増えていることも影響しているのだろう。

 また、別の大手管理会社からは、特に意識の低い管理組合に対して、「当社で第三者管理を引き受けさせてもらえれば、みなさんは役員になる必要もなく、理事会もなくなるので、管理組合の運営が大変楽になる。おまけに管理会社の受託料金も変更はない」とプレゼンを行うと、およそ半数の管理組合で、第三者管理方式の採用についての議案が総会に上程されるという話を聞いた。しかもこの総会が毎月のように開催されており、総会ラッシュの状態だというから末恐ろしい限りだ。

 無防備に第三者管理方式を採用すれば、それは確実に将来的な修繕積立金の値上げに直結することになる。

 もともとマンションの新築時に用意された長期修繕計画表には、先々で修繕積立金の大きな値上げが計画されている。自分たちのマンションを守ろうとする意識のある管理組合ならば、どこかの段階で長期修繕計画表を見直し、支出を削減しようとする動きが出てくるものだ。

 が、そこに何も疑問を持たない管理組合の場合は、管理会社にいわれるまま修繕積立金の値上げに応じ、不必要で割高な大規模修繕工事を実施しつづけていくという姿しか想像できない。

 最近では、管理会社が自社やグループ会社の利益になるような不当な発注工事の事例を問題視する報道などが目につくようになってきた。

 国土交通省でも、第三者管理方式の運営方法によっては、区分所有者の意思から離れた不適切な管理や、管理組合と管理業者との利益相反の発生、管理業者に支払うコストの増大などが生じるおそれがあるとして、今年の6月に、マンション管理業者による外部管理者方式(管理業者管理者方式)の適正な運営を担保することなどを目的として、「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」を策定している。

(参考)国土交通省の報道発表(令和6年6月7日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000205.html

 本来、第三者管理方式は、外部専門家の力を借りて、管理組合や区分所有者の負担を減らしながら、マンションの管理業務を適正に行っていくことを想定した管理方式であり、上手に導入すればマンション管理の質がよくなり、資産価値の向上にもつながる方法だ。

 ただ役員業務からの解放だけに目を奪われて、その先にある大きな落とし穴に気づかないということがないように、第三者管理方式の採用には十分な検討と慎重な判断を行っていただきたい。