加藤 ええ。でも、NHKの将棋番組では、戦いが終わった後、2人がしゃべっているところが映りますが、表情を見ただけではどっちが勝ったかわかりません。スポーツの試合と違って、ガッツポーズなどないですし、始めから見ていた人はどちらが勝ったかわかっていますが、感想戦だけ途中から見た場合はわかりにくいですよ。だから僕はときどき「こちらが勝ちました」ということを画面にわかりやすく出したほうがいいと思っている。
茂木 それぐらい勝っても負けても態度が変わらない。
加藤 自制しているところもあるでしょうね。
茂木 現実世界の中でも感想戦のようなものがあれば、争いごとも減りそうですね。相撲もそうです。勝っても負けても喜怒哀楽は表さず、最後の弓取り式で、勝った力士の代わりに弓取り式の力士が喜びを表すんです。日本独特の美意識を感じますね。
あと、将棋の感想戦というのは、勝った負けたをメタ認知に至らしめる貴重な機会なんだと思います。
大一番で引き出される
“人間の潜在能力”が感動を呼ぶ
茂木 スポーツを見ていてすばらしいと感じるのは、やっぱり大きな試合の決勝戦や、メダルがかかったときの大一番です。それがあるから人間のポテンシャルのもっとも深いところが引き出される。その、勝負がかかったときに引き出される人間の潜在能力を見て、みんな感動するんだと思うんです。