茂木 話し合いの中から正解が見つかる。一種の「教師あり学習」ですね。先生がついていて、正解を教えてくれるという学習方法ですが、それはさきほどの感想戦もそうなんです。お互いが先生になる。失敗したときほど学習効果が上がるという意味においては、感想戦はすごく学びが大きいんじゃないでしょうか。おもしろいですね。戦いが終わった後に、お互いに胸襟を開いて、1時間ぐらい対局を研究するんですね。

将棋の感想戦は
“メタ認知”の貴重な機会

加藤 そうそう。時に相手から教わることもあるの。感想戦で、「加藤さんね、こういう手を指したんだけども、あなたが指した手よりこの手のほうがいいんじゃないか」と言ってもらったりする。

 特に羽生善治さんからは、感想戦のときに、「加藤先生、ここで先生がこうやったほうがよかったんだ」と、3回ぐらい教わったことがある。そういうのを相手に教えることは、よけいといえばよけいなんだけどね。いや、でも性格ですよ。勝ったときと負けたときで感想戦のテンションに明らかな差のある棋士もいますから。

茂木 そうなんですね。これからは注意深く会話を聞きたいと思います。