この連載は、『医師が教える 子どもの食事 50の基本』の著者で、赤坂ファミリークリニックの院長であり、東京大学医学部附属病院の小児科医でもある伊藤明子先生によるものです。テレビなど多数のメディアに出演されている信頼度の高い人気の医師です。
本書の読者からは、
「子を持つ親として、食事の大切さがよくわかった」
「何度も読み返したい本!」
といった声がたくさん届いています。不確かなネット情報ではなく、医学データと膨大な臨床経験によってわかった本当に子どもの体と脳によい食事。毎日の食卓にすぐに取り入れられるヒントが満載です。今回は乾燥肌について解説します。
※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。
肌が乾燥して、ひどくかきむしります
ある日、次のお悩みを抱えて患者さんが来院されました。
【悩み】
小学校1年生の女の子。
いつもガリガリと自分で体のあちこちをかいている。
全身が乾燥していて触ってもしっとりしていない。
次のように診察、回答しました。
【回答】
視診と触診で全身に乾燥が見られ、血液検査ではDHA、EPA、亜鉛、ビタミンDが低値であることがわかった。
保湿と保護の2種類の外用薬を処方。さらに食事指導で魚、とくに青魚をできれば毎日食べるようすすめた。いきなり魚を毎日食べるのは難しいのでDHA、EPAオイルをみそ汁などに混ぜて、600mgほど摂ってもらうようにした。
※該当食品にアレルギーがある方は医師にご相談ください。
【経過】
処方から3か月後の再診では皮膚の乾燥が改善していた。DHA、EPAのオイル、外用薬を継続し、さらに3か月後には、皮膚がもっちりしてきた。
それでは、それぞれ詳しく解説しましょう。
DHA、EPAなど、オメガ3の不足・欠乏は皮膚の乾燥や炎症に関連しています
皮膚の乾燥は、皮膚バリアが傷ついている状態なので、アレルゲン(アレルギーの元の物質)や病原体などが皮膚から体内に入りやすくなっています。また、乾燥を放置するとアレルギーや不調を起こしやすくなります。しっかり対策を講じていきましょう。
この患者さんの場合、血液検査でDHA、EPAが低値であることがわかりました。DHA、EPAは青魚に含まれるオメガ3系脂肪酸です。オメガ3系脂肪酸は心身によい作用をもたらします。もちろん皮膚への効果も大きく、不足・欠乏すると皮膚の乾燥や炎症の原因になります[*117]。
DHA、EPAをしっかり摂り、カラダの中からも皮膚の乾燥を改善していきましょう。
乾燥肌とビタミンDの不足・欠乏も関係性がはっきりしています。ビタミンDのサプリメントの摂取も健やかなお肌のためにお忘れなく!
アトピー性皮膚炎と乾燥肌
アトピー性皮膚炎はかゆみと炎症が特徴で、その原因の1つには皮膚の乾燥があります。赤ちゃんのときから皮膚が乾燥していると、皮膚バリアが壊れやすくなっています。そして弱った皮膚を通してアレルゲンや病原体が入り込みやすい状態になり、そこからアトピー性皮膚炎やアレルギーが進んでいくことがあります。
皮膚が乾燥していたら、医師に保湿剤を処方してもらって、毎日しっかり塗ってあげてください。
塗るときのポイントは、
●カラダを清潔な状態にする
●お風呂上がりの場合は、3分以内に塗る
●ティッシュペーパーが張りつくくらい、量はたっぷり
●ゴシゴシとすりこまず、手のひらでやさしくなじませる
です。
皮膚の乾燥には、保湿と保護の2段階が有効です
皮膚の乾燥は、もちろんカラダの外からのアプローチも必須です。
皮膚が乾燥しているときは、「皮膚の保湿」のための保湿剤と、「皮膚の保護」のための保護剤の2つを重ねて塗ることがよいと研究でも示されています。保湿剤で乾いたところを保湿し、乾かないようにフタ・膜を張るように保護の外用薬を塗りましょう。
保湿剤としては「ヘパリン類似物質」系を処方することが多く、保護剤は白色ワセリン系がほとんどです。
市販の保湿剤ではセラミド系もよいようですが、やや値段が張ります。ちなみに、セラミド系は医療機関からの処方はできません。
(本原稿は伊藤明子著『医師が教える 子どもの食事 50の基本から一部抜粋・編集したものです)