一般の人々の性格特性における
「よさ」「悪さ」とは何なのか
見方を変えると、ポジティブ心理学とダークな性格という研究の両面は、それまで「この手の研究をあまり積極的に行わない方がいいのではないか」とイメージされてきた領域に、光を当てるものでもありました。
心理学で「よい」「悪い」を研究対象としてこなかったわけではありません。たとえば発達心理学では、より望ましい方向への年齢に伴う心理面での変化を研究対象とします。
しかし、私が心理学のトレーニングを受ける中でも、研究の中で価値観を伴う判断は慎重に行うようにと習ってきました。
病理的な状態を正常へと引き戻す研究は、比較的価値観は明確です。実際に困っている人がいるのですから、それを正常な方向へと向かわせるのです。
しかし、正常範囲内で「より望ましいもの」「より望ましくないもの」を考える場合には、判断基準が曖昧になります。よくても悪くても、あくまでも「正常の範囲内」であり「健康な一般の人々の範囲内」の問題なのです。
もちろん、日々の生活の中で私たちは喜んだり悲しんだり、落ちこんだりもします。ただしそれは、何も手につかず仕事も勉強も長期にわたってすることができない、日常生活が成り立たないような落ち込みや悲しみではありません。