猿Photo:PIXTA

我々に馴染み深いニホンザルは、同じグループに属する他の種類のサルと比べると、しっぽが格段に短いという。しっぽの研究者が、サルを例に、しっぽの長さの違いが動物の分類や進化の過程を理解する上で重要な手がかりとなることを解説。動物園でのハプニングを交えながら、身近な動物たちの知られざる一面に迫る。本稿は、東島沙弥佳『しっぽ学』(光文社新書)を一部抜粋・編集したものです。

しっぽの長さの不思議
長さと生息地の気候の関係性

 しっぽはどうやら子どもたちに人気のようで、ときどき質問をもらうことがある。

「どうして人間にはしっぽがないのですか?」
「どうして動物にはしっぽがあるのですか?」

 大体いつもこの2種類の質問なのだが、どちらも、多くの動物にはしっぽがある/でもヒトにはない、ということをしっかり認識していることの証拠で、子どもの観察眼はすごいなと毎回感心している。

 ヒトになぜしっぽがないのかへの回答に関しては別の機会で述べるとして、ここではまず動物にはどうしてしっぽがあるのかについて語ろう。

 それを答えるためには、脊椎動物におけるしっぽの進化を考える必要がある。

 脊椎動物はいつからしっぽを得たのだろうか。はっきりとしたことは分からないが、魚類にもしっぽがあるわけだから、水中で脊椎動物が生まれたときにはすでに持っていたのだろうと考えられる。

 水中での推進力を得るためには尾鰭を動かす必要がある。そのため肛門より後方にまで体幹が延長したのだろう。脊椎動物の基本的なボディプランとしてしっぽは組み込まれており、それが現在の脊椎動物まで継承されているというところだろう。だから、ほとんどの脊椎動物にはしっぽがある。