肩甲骨の位置と密接に関係するのが胸郭のかたちである。胸郭というのは、肋骨と胸骨、胸椎で形成されたカゴのような構造のことで、その内部の空間を胸腔と呼ぶ。

 胸腔には肺や心臓、大動脈、大静脈、食道、胸腺など生命維持に欠かせない重要な臓器が存在しており、胸郭はこれらを守るのに一役買っている。

 さて、その胸郭だが、ヒト上科では前後に扁平な幅広型であるのに対して、その他の動物では前後方向と比べて左右の幅が狭いかたちをしている。肩甲骨は扁平なかたちの骨であるので、ヒト上科では幅の広い胸郭の背中側に、その他の動物では胸郭の側面に位置することとなった。

 つまりヒト上科では、腕を真上に伸ばしてぶら下がるという運動に適応したことにより、前後方向に扁平な胸郭と背中側に位置する肩甲骨という形態が獲得されたと考えられているわけである。

 その他にもヒト上科には、大臼歯のかたちなど様々な形態の共通性が見られるのだが、ヒト上科とは何かという最も古典的な形態的定義の1つが、しっぽがない、ということなのである。大事なことなので2回言おう。ヒト上科(類人猿)にはおしなべてしっぽがないのである。