メガネザル類はその名の通りアジアに棲むメガネザルの仲間であり、広鼻猿類というのは中南米地域に生息している霊長類である。しっぽが器用なクモザルやオマキザルなどはここに含まれる。ヒトへと向かう枝は狭鼻猿類で、そこからオナガザル類(オナガザル上科)とヒト上科が枝分かれするのである。

 ヒト上科におけるしっぽ喪失の歴史を考える上で重要な化石は、これまでに主に2種類発見されている。皆さんにご紹介したい1つ目の化石は、オナガザル上科とヒト上科の共通祖先だと考えられているもの。

 エジプトで発見されたエジプトピテクス(Aegyptopithecus zeuxis)という約3300万年前の化石である。部分的にしか化石が発見されていないのだが、驚くべきことに遠位尾椎が1点出土している。これは非常に素晴らしい。遠位尾椎がたった1つでもあるということは、この種が間違いなくある程度の長さのしっぽを持っていたことを意味する。

しっぽを喪失したとみられる
1800万年前から1550万年前の化石

 しっぽ喪失に関わる重要な化石の2つ目は、ヒト上科の共通祖先だと考えられている生物の化石である。およそ1800万年前から1550万年前に生息していたと考えられる霊長類であり、これまでに複数種の化石が発見されている。