「らくたび京町家」と特別イベント

らくたび京町家この一帯には藤原道長のひ孫である宗道の邸宅があったと伝わります。パスポートがあれば、ツアー参加者以外でも、通常非公開の「らくたび京町家」(中京区)を11月3日に見学できます!

京都の建築」と聞いてまず思い浮かぶのは、清水寺や金閣寺といった寺院や伏見稲荷大社の鮮やかな赤の鳥居が立つような神社、あるいは京町家ではないでしょうか。進取の気風に富む京都は、実は明治時代から戦前にかけて建てられた近代建築の宝庫でもあります。幸いにも禁門の変/蛤御門の変(1864年)によるどんどん焼け以降、洛中は戦争や災害による大きなダメージを受けず、和と洋が融合した美しい街並みを織りなしています。

 この連載でも時々登場している私たちのオフィス「らくたび京町家」も、今回パスポートとツアーの両方で参加します。1932(昭和7)年に建てられた「旧村西家住宅」という築92年の近代建築で、国の登録有形文化財。泉正寺町にありますが、京都の人に町名を伝えても町の数が多過ぎてピンときません。蛸薬師通高倉西入(蛸薬師通と高倉通の交差点を西に入る)と伝えるとすぐに理解してもらえるはずです。

 大丸さん(大丸京都店)から北に2筋上がった蛸薬師通に面しています。平安時代には貴族の邸宅や臨時の内裏(だいり)も置かれ、その後は酒屋や土倉(金融業)、油屋などが増え、応仁の乱で寂れた後、豊臣秀吉による京都大改造でにぎわいを取り戻し、手工業者の町となりました。

 明治初年につくられた元学区を示す番組小学校「下京第4番組日彰小学校」の元学区で、30年前の統廃合で誕生した高倉小学校がその跡地に入りました。このように、モダン建築のある場所とその周辺の歴史的な積み重ねを知ることで、建築散歩が格段に興味深いものとなります。

 ツアー名は「代表若村さんが特別案内、洋間と茶室をしつらえた近代京町家の代表例」。11月3日(日祝)午後5時半開始の1部は完売しましたが、午後7時からの2部は受付中です。なお、パスポートをお持ちの方は当日午後5時まででしたら見学OK。この機会に、皆さまのご来訪をお待ちしております。

 建物の公開以外にも特別イベントがあります。初日11月1日夜には前夜祭として、世界的建築家で、京都市京セラ美術館館長の青木淳氏による「建築の見方・感じ方・楽しみ方」の講演があり、9日と10日には「京都建築Bar」や「親子で語る対話型建築鑑賞」、トークイベントなどが開催されます。