モダンストリート「三条通」を歩く

TIME’S明かりがともると情緒を増す、安藤忠雄のTIME’S

 かつての三条通は、幅員24mもある平安京の東西を結ぶ大動脈でした。東海道五十三次が三条大橋で終わるように、江戸時代でも京都のメーンストリートでした。明治中期から昭和初期にかけて、家邊徳時計店(1890年)、中京郵便局(1902年築)、SACRAビル(旧不動貯金銀行京都支店/1914年)、1928ビル(旧大阪毎日新聞社京都支局/1928年)など、今もモダンなビルが造られています。

 三条通のモダン建築の中でも、ぜひ訪れておきたいのが「京都文化博物館別館」。こちらは1906(明治39)年にできた旧日本銀行京都支店で、国の重要文化財です。設計したのは辰野金吾とその弟子の長野宇平治。赤れんがの途中に挟まる白い花こう岩の線は辰野式と呼ばれ、東京駅でもおなじみのものですね。別館ホールとして活用されていますが、11月1日にはナイトミュージアムKANSAI特別イベント「アートと音楽の夕べ~JAZZピアニスト高木里代子を迎えて~」という音楽会が開催される予定で、展覧会の半券があれば無料で聴くことができます。

 この博物館に22年間勤務していた京都外国語大学国際貢献学部の南博史教授によれば、南北を姉小路通と三条通、東西を高倉通と東洞院通に挟まれた博物館もある一角には、かつて後白河天皇の皇子である以仁(もちひと)王の高倉宮がありました。3m掘ると平安時代の地層に達したので調べたところ、通りとの区切れの溝や塀の位置が800年前と同じだったことに驚いたとか。

 高倉通を下がると、冒頭でご紹介した「らくたび京町家」ですが、このまま東に進みましょう。河原町通の先、高瀬川のあぜにコンクリート打ちっ放しの建物が。「住吉の長屋」(1976年)で注目された安藤忠雄が、関西周辺の商業施設などを多く手掛けていた時期の「TIME’S」(1984年)です。もうあれから40年もたつのですね。以前はカフェやアパレルショップがテナントで入っていましたが、現在は空き物件になっていて、門が閉ざされています。近年増えている外資系ホテルに変わるのか、それには少し狭い(?)ということで、今後に注目したいところです。