ネオ・ルネサンス様式の「京都府庁旧本館」
ここからは、京都中心部を西から東へと、近代建築を中心に見て歩きましょう。地下鉄烏丸線「丸太町」駅から北西へ10分歩くと、京都府庁があります。その正門の正面にたたずむシンメトリーな美しいレンガ造りの建物が、1904(明治37)年竣工(しゅんこう)の「京都府庁旧本館」。新しい本館ができるまで67年にわたって京都府の中枢として活用され、現役の官公庁建築としては日本最古の建物です。
設計した京都府技師の松室重光は、第22回で取り上げた松尾大社の摂社・月読神社の神官の家系。やはり国の重要文化財である御所南の京都ハリストス正教会聖堂(1901年/中京区)や、岡崎にある京都市武徳殿(1899年/左京区)も手掛けています。正教会聖堂では9日にガイドツアーが予定されています。
この旧本館は、ルネサンス様式をベースにした和洋折衷のネオ・ルネサンス様式の名建築。中庭の四季を映す大きなガラス窓や大理石の手すりを備えた正面階段は、ウエディングの撮影スポットとしても人気があります。館内の正庁や旧知事室、日本最古の議場という旧議場は曜日限定で内部も見学することができます。元人事委員会の執務室だった部屋は、二条城や旧日本銀行京都支店の蔵など京都の名建築を生かしたカフェを数件手掛けている老舗の「前田珈琲」のカフェ「salon de 1904」。格調高い空間で、コーヒーをはじめ、ボリュームたっぷりのサンドイッチやスパゲティなど軽食が楽しめますよ。
京都府庁正面の釜座通から東へ2筋の衣棚通を下っていくと、右手にユニークな建物が!思わずあっと驚きますが、建物の方もあっと驚いた表情でこちらを見ています。なんだか顔に見える気がする……ではなく、窓が目、玄関が口、側面のベランダが耳。誰がどう見ても明らかに顔です。個人宅として建てられた通称「顔の家」(1974年)。東京の銀座にある数寄屋橋交番(1982年)など、曲線遣いに特徴がある山下和正の作品です。