資源国と中国経済の関係に微妙な変化

 これまでの中国の経済対策発表後の資産価格の反応を見ると、最近では価格上昇ペースが長続きしなくなっている。かつて、中国は「世界の工場」として資源、資材、工作機械などを輸入し、軽工業分野から段階的に工業化を進め、モノの輸出を増やした。それに伴いブラジルやオーストラリアなどでは、鉄鉱石やエネルギー資源の対中輸出が増えた。中国の経済成長への期待から、資源国の株価や通貨は上昇した。

 リーマンショック後、中国政府は輸出よりも国内需要を重視した経済運営にシフトしようとした。2008年11月の4兆元(当時の為替レートで57兆円程度)の大型経済対策、17年秋の党大会前の公共事業の積み増しも、世界の資源需要などを押し上げた。

 中国の公共事業が増え、設備投資も伸びると、追随するように韓国やインドネシアの輸出も伸びた。当時、世界経済にとって中国は重要な成長のけん引役だった。

 ところが、コロナショックを境に、中国と資源国、他の新興国の資産価格、景況感などの連動性が低下しつつある。背景には、中国の不動産投資が過剰になったことが挙げられる。不動産や地方政府などの債務問題が深刻化し、資本の効率性は低下している。

 中国政府は目下、国有・国営企業の生産能力を拡充している。これにより、鉄鋼などは過剰な生産能力問題に拍車がかかっている。例えば今、中国が輸出する圧延コイルの価格は1トン当たり500ドル台で、21年5月に付けた直近高値の、半値しかない水準だ。中国からの安価なモノの輸出によって、鉄鋼などの分野で国際的な価格競争は激化した。新興国や資源国にとって、中国は重要顧客から競争上の脅威に変質し始めている。

 不動産バブル崩壊も、中国の経済成長率の低下につながっている。また、人口減少は労働コストの上昇につながり、世界の工場としての地位が低下傾向にある。台湾辺境問題や、米中対立などもあり、中国から母国、あるいはベトナム、インドなどへ拠点を移す多国籍企業は増えている。こうしたことから、資源国と中国経済の関係に微妙な変化が生じるようになった。