自分の起こした連邦議会襲撃は正当で相手がやれば「反乱」というのも、随分身勝手な理屈ですが、選挙に負ければ逮捕の可能性があったトランプにしてみれば、敗戦時を見据えてハリス陣営以上の抵抗策を考えていたはずです。ハリス陣営の対抗策とトランプ陣営の対抗策を天秤にかけると、時間がトランプに味方し、ハリス氏の3つの案は決定打とはなりえません。そこで浮上したのが、こんなウルトラCです。
最後の禁じ手
トランプ撃退のウルトラCとは
【第4案】最終手段の「禁じ手」、バイデン氏による権力委譲の拒否
「エエッ、こんなことができるの?これじゃトランプと同じじゃないか」と日本人なら思うでしょう。しかしこのシナリオには、一部の専門家も賛成をしています。
合衆国憲法の研究センターであるナショナル・コンスティテューション・センターは、憲法は「君主制、独裁制、貴族制、または恒久的な軍事支配による統治をいかなる州にも課すことを防ぐ」ことを義務づけていると説明し、それが州に対して真実であるならば連邦政府に対しても真実である、連邦政府自体が共和制の政府でなければこの保障条項は意味を失う、と言っているのです。
このシナリオでは、バイデン大統領は辞任し、ハリス副大統領が大統領に就任することになります。ハリスは就任宣誓と「内外のあらゆる敵」から憲法を守るという公約を盾に、「憲法を廃止する可能性がある人物への政権移譲を拒否しなければならない」と宣言します。根拠は、トランプ氏がいくつかの州で憲法修正第14条第3項違反が適用された人物だからということになります。
この措置は、憲法上の問題はないのですが、憲法によって発足が義務づけられている「憲法制定会議」が審査することになっています。が、「憲法制定会議」を召集する前にトランプによる強権発動で阻止される可能性も大いにあります。
民主主義は、民主的なプロセスによって、逆に民主主義を否定する独裁者を誕生させてしまう危険性をはらんでいます。たとえば、1933年のドイツ総選挙の結果、発足したナチスのヒトラー政権などはその典型です。そのため西ドイツでは、1956年に共産党が非合法とされました。合衆国憲法にも、民主主義を否定する人物が大統領選挙に勝利してしまった場合、これを阻止して共和制を守る義務が明記されているのは、当然といえば当然です。