シングルファザーは
シングルマザーより孤独?
ところで、シングルマザーとシングルファザーを比較した場合、どちらが孤独だろうか。
離婚を経験していない人には「どちらも同じだ」と言われそうだし、シングルマザーからは「私たちの気持ちも知らないで勝手なことを」と厳しい眼差しを向けられそうだが、私はシングルファザーのほうが圧倒的に孤独だと主張したい。
なぜシングルファザーのほうが孤独かというと、ジェンダーギャップ指数が相変わらず先進国の中で最下位にある日本では、「会社で働くのが男性」「家で子育てするのは女性」という役割分担についての意識が根強く残っているからである。実際、子供がいる家庭が離婚する場合、男親が親権を持つのは全体の一割だといわれる。つまり、ひとり親家庭というだけでマイノリティなのに、そのマイノリティの中でもさらにマイノリティなのが、「シンパパ家庭」である。極端な言い方をすれば、世の中に「存在しないはずのもの」とみなされているとさえ言っていい。
このような偏見は、社会のいたるところにあって、不意に私の心をえぐってくる。
たとえば、ショッピングモールなどに出かけていく。トイレに行くと、女性用のトイレにはおむつ替え台があるが、男性用には備え付けられていないことがよくある。つまり、おむつを替えるのは母親だという暗黙の前提がある。ショッピングモールの経営者も、さっきすれ違った利用者もみんな、シングルファザーなど眼中にないという気がしてくる。