校則がないのはレベルが高い学校がほとんどです。ほとんど校則がなくても成立するのは、自分で善しあしを判断できる生徒が多い学校だけ。そうでないのに校則をなしにすると、際限なく授業中でもスマホを見てしまうことになりかねないのが現実です。
──以前、世田谷学園で生徒さんに「山のようにある校則が厳しいとは感じないか?」と聞いて回ったところ、全員が「厳しくない」と答えたので拍子抜けしました(笑)「校則は条例みたいなもので、取り締まられたことがない」という生徒もいました。
全部、当たり前のことだから、当たり前のことを当たり前にっていう意識が生徒に浸透している証拠ですね。
通信制人気に待った!
「五輪選手も在籍」の裏側
ーー生き残りをかけて、独自路線をとって差別化を図らなければならない学校もあると思います。安田さんがこれからの中高一貫校に期待することは何ですか?
私は先生方に「リアルな学校は通信制ではできないことをやっていただきたい」と常々お話ししています。今は通信制の学校もたくさんあって、N高やS高※も大人気です。
(※KADOKAWA・ドワンゴがインターネットと通信制高校の制度を活用して創立した学校)
姉妹校であるR高も2025年4月に開校の予定ですが、今、通信制高校在学生が急速に増えています。この夏、活躍したオリンピック選手も複数人が通信制高校に在籍していることが話題になりました。
それは海外遠征をしていると全日制の高校では単位が取れないからなんですが、そうした情報を見て通信制高校に憧れる人たちも増えています。この夏の全国高校野球選手権では、沖縄県の準決勝に勝ち残った4校のうち3校が通信制高校でした。やりたいことを思いっきりやりたいということで選ぶ生徒もいます。
これから先ますますこういう状況になるわけですから、全日制の学校はますます通信制ではできないことをやらないといけないんですよ。
私は、できれば先生や級友、先輩・後輩とさまざまな刺激をしあって成長するということがリアルな学校のいちばんの魅力だと思うんです。人と人が向き合うとき、リアルに勝るものはありません。
先生が、自分の人生から得た“肉声”を、“体温”を感じさせながら伝えるーーここに通信制が広がり、また多くのことがAIに代替される時代における、リアルな学校の存在意義があると考えています。
ーー通信制だから才能が開花するのではなく、もともと才能ある子どもが通信制に集まるんですね。校則の話と同じで順番を考えないと学校選びに失敗しそうですね。次回は、「学校選びの意外なポイント」について教えていただきます。